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トランプ軌道修正でルーラと接近=電話会談はブラジル・米国関係の転換点か

2025年10月8日

万華鏡1
6日、ルーラ氏との電話会談について記者団に語るトランプ氏(Foto: RS/Fotos Públicas)

長らく水面下で調整が進められていたブラジル・米国両国首脳による電話会談が6日、ようやく実現に至った。約30分にわたる会談では、通商政策やビザ発給の制限解除を含む両国間の懸案事項が取り上げられ、トランプ大統領は「両国は非常に良好な関係を築く」との考えを示した。ボルソナロ氏と連携していたトランプ氏の軌道修正は、国際的に後退が鮮明なボルソナロ派にとり大打撃となるとのコラムを6日付エスタード紙(1)が報じた。

著名政治評論家でジャーナリストのエリアーネ・カンタニェーデ氏は同紙コラムで、今回の電話会談を「ブラジル・米国関係における転換点」と評し、その政治的意味合いと外交的余波について分析した。

彼女の見方では、両首脳による対話は米国からブラジルに向けられていた強硬な姿勢に一応の「停戦」がもたらされた格好だという。今会談を通じてブラジル政府および国内産業界が得た成果は大きく、両国間の交渉路線が本格的に開かれた点を強調した。

カンタニェーデ氏によれば、今回の成果を高評価として国内外に決定づけたのはトランプ氏の反応そのものだという。かつては対立的な態度を崩さなかったトランプ氏が、今回はルーラ氏に対して終始友好的な姿勢を見せ、「両国は非常に良好な関係を築くだろう」と発信した点は見逃せないと指摘する。

会談では、ブラジル製品に課されている最大50%の関税是正と、同国公務関係者に対するビザ制限の解除が中心議題として取り上げられた。この議題について明確な合意は得られなかったが、両首脳間の政治的な「化学反応」によって、今後の交渉に向けた環境が整備されたとの見方が広がっている。

会談の実現それ自体が、一歩前進であり、楽観的な展望がブラジル政府内でも共有されているという。

その結果、今回のブラジルと米国接近によって不利益を被るのは、ジャイール・ボルソナロ前大統領と、その三男エドゥアルド下議を中心とする「ボルソナロ派」だと、カンタニェーデ氏は指摘。国内外で影響力低下が顕著となる中、米国においてもこれまでの主張が事実に基づかないものとして退けられつつあると見ている。

トランプ氏が現実を直視し、かつての盟友だったボルソナロ陣営から距離を取り始めたことは、ブラジル国内外における政治的力学に確実な変化をもたらす兆候といえる。カンタニェーデ氏は、今会談が単なる一時的な出来事にとどまらず、ブラジル・米国関係の再構築に向けた出発点になる可能性があると結んでいる。

この動きを受け、ブラジル最高裁(STF)内でも変化の兆しが読み取れる。6日付ヴァロール紙(2)によれば、複数のSTF判事は今回のブラジル・米国首脳会談が、エドゥアルド下議の対米影響力に疑念を生じさせる契機になったと受け止めている。

エドゥアルド氏はこれまで、ブラジル当局者に対する制裁措置を米国側に働きかけるなど、外交的圧力の先頭に立ってきた。だが、トランプ氏自らがルーラ氏との関係改善に動いたことで、彼の立場は著しく弱体化したとの見方が強い。

判事らは、ルーラ氏が司法の独立を一貫して擁護してきた姿勢を評価し、制裁解除には対抗措置よりも外交的対話が有効だとの見方から、今回の会談を肯定的に受け止めている。エドゥアルド氏が実際には国際的に孤立しており、個人の動きでブラジル・米国関係を左右できる立場にはないことも明らかになったと指摘する。

STF内では外国の制裁に対抗する「反報復法(Lei antiembargo)」の導入が検討されてきたが、ルーラ政権は関係修復を優先し、米国との交渉路線へと舵を切った。

トランプ氏は同日、記者団に「大変良い会話だった。これから(ブラジルと)ビジネスを始める」と語り、対面会談の可能性にも言及。両首脳の対話が実務的な連携へと発展する兆しが強まっている。

ただし、これに対してエドゥアルド氏はこの動きを過小評価し、対米交渉の責任者にルビオ国務長官が就任したことについて〝ゴラッソ(華麗なゴール)〟と称賛。ルビオ氏について「中南米を熟知し、左派の全体主義政権の仕組みに精通している」と述べ、強硬路線の継続が期待できるとの見方を示した。

どちらの見方が正しいのか、今後の展開に注目が集まりそうだ。


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