ルポがパラグアイに工場移転=28%のコスト削減可能
「ブラジルは我々を隣国に追いやった」――過剰な税負担が企業活動に重大な影響を及ぼし、競争力維持のために事業戦略を見直す企業が増えている。サンパウロ州アルアラクアラ市に本社がある大手下着メーカー「ルポ(Lupo)」もその一つだ。同社は6月、隣国パラグアイのシウダ・デル・エステに初の国外工場を開設。最高経営責任者(CEO)のリリアナ・アウフィエロ氏は、16日付フォーリャ紙(1)で、ブラジルの税負担が利益を圧迫し、競争力の維持が困難になったため、コスト削減を目指し国外に拠点を移転する決断を下したと語った。
1921年創業のルポは現在、9千人の従業員を擁し、フランチャイズ店舗911カ所、直営店9カ所、工場5カ所、物流センター3カ所を運営する。24年の売上高は18億5千万レに達した。
同社は今年、3千万レを投じてパラグアイに新工場を建設。年間2千万足の靴下の生産能力を誇るこの工場では、約110人の従業員が働く。彼女は、工場移転が企業の競争力維持とコスト削減を実現するための重要なステップであると強調。パラグアイでの操業は、ブラジルと比較して28%以上のコスト削減が可能だという。
23年末、ルーラ大統領が承認した新たな税制改革により、州や自治体が提供していた税制優遇措置に対する連邦政府の免税措置が廃止となった。この変更は、企業に更なる負担増を迫り、事業戦略を再考せざるを得ない状況を生み出している。
ただし、税負担だけが同社の課題ではない。アジアの低コスト製品との競争も激化し、特に中国企業がパラグアイ市場にも進出していることが、大きな脅威だ。リリアナ氏は「もし中国企業が、ブランド強化に投資せず、低価格の商品を提供して競争力を持つのであれば、我々も同様に低価格戦略を取らざるを得なくなるという現実がある」と語り、競争環境の厳しさを強調した。
ルポは、既存の靴下や下着市場に加え、スポーツウェア分野にも進出し、事業ポートフォリオの多角化を進めている。特に、同社が展開するブランド「ルポ・スポーツ」は、成長が著しい部門の一つ。11年の立ち上げ後、現在は売上の約22%を占めており、23年上半期には28%の成長を記録。同ブランドは新たにスニーカー市場にも参入。同社が長年にわたり培ってきたインナーウェア製造技術を活かし、優れた履き心地が評判だ。価格は359レ(約1万500円)で、100店舗以上で販売が開始されている。
同社は、かつて競争力を高めるために北東部への拡大を進め、税制優遇措置や織物産業の労働力を求めていた。16年には「トリフィル」や「スカラ」といったブランドを所有する「スカリーナグループ」を買収。同社は、バイア州イタブナとサンパウロ州グアルーリョスに工場を持っていたが、グアルーリョス工場を閉鎖し、バイア州に生産を集中させた。22年には、セアラー州フォルタレザ郊外のパカトゥバでマリソール社の工場を買収し、翌23年には同州マラカナウのコテセ織物工場を買収した。この拡大戦略は、ルポがブラジル国内における競争力を高めるための重要な要素となった。
ルポの創業家で、リリアナ氏の祖父にあたるエンリケ・ルポ氏は、家族経営において厳格な規律を守り、3代目からは家族が企業で働くことを禁じていた。リリアナ氏は、家族間の争いが企業の将来を危うくすることを避けるため、この方針を守り続けた。現在、ルポは約70人の株主を抱え、リリアナ氏は唯一の経営陣として企業を指揮している。
だが、実際には、企業内では4代目株主のウィルトン・ルポ・ネト氏と、3代目のエドゥアルド・キリノ・ドス・サントス氏が、同社の財務情報の透明性を巡り対立。両者は、取引先との関係や、株主間でのフランチャイズの運営に関する情報が不十分だと訴えており、企業ガバナンスに対して疑問を呈している。
現在80歳のリリアナ氏は、後継者としてカルロス・アルベルト・マゼウ氏を指名している。マゼウ氏は40年以上にわたりルポに勤務し、現在は副社長として投資家関係を担当。だが、リリアナ氏は急いで引退するつもりはなく、「引退は、私の死ぬ日だろう」と語るなど依然として経営を強く牽引している。









