COP30=アマゾン〝守り手〟が蚊帳の外⁈=ラオニ酋長に発言機会なく物議
気候変動の行方に直結するアマゾンの〝守り手〟先住民族。だが、その議論の場で、先住民代表の声はなぜ届かないのか――ブラジルで最も著名な先住民族指導者ラオニ・メトゥキレ酋長(93歳)が、第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)で公式発言の機会を与えられなかった。ラオニ氏はこれに抗議する形で非公式会合を行い、領土の保護と資金の直接配分の必要性を訴えたとBBCブラジル(1)が報じた。
ラオニ氏は15日、COP30のメイン会場「ブルーゾーン」で、約60人を前に発言した。この会場は、締約国の公式代表団が参加し、気候変動の交渉が行われる重要な場所で、国連管理の下、入場が制限されている。
ラオニ氏は、自身のカイアポ族の権利のみならず、ブラジル国内外の先住民族の権利擁護にも取り組んできた。同氏のチームによれば、COP議長団およびルーラ政権のいずれからも公式発言の招待は届かなかった。今会合はパナマ政府の支援で確保され、パナマ代表団はラオニ研究所と若手活動家のグループと共に、気候基金パビリオン内でイベントを企画した。
ラオニ研究所のマヤルー・チュカラマイ執行委員長は、「ラオニ氏の大規模イベントがCOPで行われるはずだった。公式に発言するべき立場にあり、予定が何も組まれていなかったことに失望している」と語った。同研究所は、ラオニ氏が17日にマット・グロッソ州カポト・ジャリナ先住民居住区に帰郷する前に、政治的メッセージを届けられる場を模索していたという。
研究所は、チームのメンバーがブルーゾーンに入るための認証取得に困難を抱えていたことを指摘。ラオニ氏本人を含め4人分の認証しかなく、高齢で車椅子を使用する同氏の移動や支援には不十分だったという。最終的に、パナマ代表団の支援により約30人分の認証が確保された。
パナマの気候変動代表フアン・カルロス・モンテレイ・ゴメス氏は、「ラオニ酋長のコミュニティ指導者から、ブルーゾーン内でイベント開催の支援を求められた。COP副議長として、先住民の声がここで聞かれるべきだと判断し、支援を行った」と説明した。
一方、COP30広報部と大統領府社会通信局(Secom)は、先住民族省の公式見解として「ラオニ研究所からの正式な連絡や批判は受け取っていない」と回答。同省は、ブルーゾーンにはブラジル代表団として360人の先住民を認証し、全国15カ所で約2千人の先住民リーダーと対話を重ねてきたと主張。これら先住民参加者は、ブルーゾーンに認証されたブラジル代表団約3千人の内の12%を占める。
ラオニ氏は15日、ソニア・グアジャジャラ先住民族相と共に、気候基金パビリオンの指定スペースに到着。ここで彼は「森を守るために真実を擁護する必要がある」と発言。資金が先住民に直接届いていない現状を批判し、「この資金は私たちに届くべきであり、私たちの活動と領土保護に活用される必要がある」と訴えた。
同会合の共同主催者で、活動家のパロマ・コスタ氏は「先住民族相が先住民の場を守るために尽力したが、最終的な決定は大統領権限による。ブラジルはこのCOPの議長に白人男性を置いた」と批判した。
ラオニ氏は16日、グアジャジャラ先住民族相と共に、マリーナ・シルヴァ環境相やCOP30議長、ルーラ政権の要人らとの非公開会議に参加した。この会議では、先住民の支援や領土の正式な保護、森林破壊の抑制についての緊急性を伝えたが、会議の招待は前日になされ、ラオニ研究所と気候基金のイベントがほぼ同じ時間に重なるなど、配慮に欠ける日程だった。
政府側は、ラオニ氏がブルーゾーン内でのアクセスに支障がないよう、警察の護衛のもと移動をサポートしたと説明。だが、なぜ公式プログラムでの発言権が与えられなかったかについて、ルーラ政権は明確な回答をしていない。
他の主要先住民族指導者の状況も、ラオニ氏と類似。BBCの取材によれば、ヤノマミ族のダヴィ・コペナワ酋長および息子のダリオ氏も、ブルーゾーン内のイベントには参加したが、先住民族相や国立先住民族保護財団(Funai)との面会は設定されなかったという。









