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COP30=ディーゼル発電機160台稼働=化石燃料依存の皮肉が浮き彫りに

2025年11月14日

万華鏡2
COP30のメイン会場「ブルーゾーン・パビリオン」(Foto:)

パラー州ベレンで開催中の第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)では、会場の冷房や電力供給を支えるために160台ものディーゼル発電機が稼働しており、化石燃料依存の現実が露呈している。気候危機の克服を掲げる会議の裏側で、エネルギー転換の困難さと矛盾が象徴的に浮かび上がっていると10日付BBCブラジル(1)が報じた。

ベレンの11月の気温は30度を超えることが多く、冷房設備は欠かせない。冷房設備のための発電機は24時間稼働しており、会議に参加する各国首脳や交渉官、科学者らは快適な空間で過ごすことができている。だが、その燃料はディーゼル油。温室効果ガス排出量が最も多い化石燃料の一つだ。環境問題の根本的な解決を目指すCOP30が、化石燃料に依存しているとして批判を集めている。

BBCが入手した契約入札要項では、「再生可能燃料、特に100%再生可能なB100型燃料を優先」と明記されていたが、実際には、主催者側は国営石油会社ペトロブラス(PB)と契約し、最大25%の再生可能成分を含むR10型ディーゼル油の使用を決めた。国連の都市向けマニュアルも、「低炭素代替エネルギーを優先、発電機使用時は水素処理植物油などを推奨」としているが、環境団体やバイオ燃料業界は、ディーゼル油使用は象徴的かつ皮肉的だと指摘する。

COP30運営側は、「入札では100%再生可能バイオディーゼルを想定していたが、物流、安全性、地域供給の容易さ、契約機器との互換性を考慮しディーゼル油を選択した」と説明。PBは声明で、「会議で使用するR10型ディーゼル油は、10%の再生可能成分と法定義務の15%バイオディーゼルを混合し、温室効果ガスを60〜85%削減可能」と述べた。

COP30のメイン会場「ブルーゾーン・パビリオン」は、約16万平方メートルに及び、サッカーコート16面分の広さを持つ。もともと駐車場だった場所には、巨大な白いテントが張られ、発電機や空調機器の稼働音が常に響き渡る。

このディーゼル油使用は、再生可能エネルギーが十分にあるパラー州で特に注目を集めている。同州には、ブラジル最大級の水力発電所であるベロ・モンテとトゥクルイがあり、全国の送電網に接続している。だが、州電力会社は「一時的かつ集中した電力需要には発電機が必要」と説明。恒久的な設備投資を行うと、他の利用者の料金が上昇する可能性があるとも述べた。

発電機契約は9月に入札で締結され、総額約5100万レの見積もりに対し、落札価格は3800万レ。契約には80MWの発電能力を持つ160基のディーゼル発電機設置が含まれる。一部は小型車ほどの大きさにもなり、これらが通信、サーバー、空調などCOP30全体を支えている。

ディーゼル油の使用は、世界が脱化石燃料を模索する中でその現実的困難さを示している。24年、ブラジルのアマゾン森林伐採率が17年以来最低を記録したと発表された。しかし、その一方で、アマゾンやアマパー州沖の堆積盆では新たな石油開発が進められようとしており、国内外から批判を受けている。

23年のCOP28では、社会運動と科学者の圧力で初めて「化石燃料からの転換」が最終文書に盛り込まれたが、実行計画や期限は示されなかった。そして石油産出国や関連企業は依然、逆進的な圧力をかけ続けている。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、21年時点で世界で使用されているエネルギーの内、その8割は化石燃料だという。ブラジルの使用割合は再生可能燃料50%、化石燃料50%、電力に限れば再生可能燃料比率は88%となっている。温室効果ガス排出の主因は、森林破壊、農牧業、化石燃料燃焼の順だという。

今回、COP30でディーゼル油が選ばれた理由は、持続可能な代替手段が存在しないからではない。国家原油庁(ANP)は24年4月、100%再生可能なB100型バイオディーゼルの試験使用を承認し、入札書類にも同燃料の30日間の連続使用が望ましいと明記されていた。バイオディーゼル議会連盟は同年8月、B100型の使用提案を提出したが、採用されなかった。

バイオディーゼル議会連盟のアルセウ・モレイラ下議は「これは偽善だ。政府は表向きには持続可能性を掲げながら、実際には化石燃料を選んでいる。我々は清浄な代替案を提示したが、選ばれたのは高汚染燃料だ」と批判した。

一方、パラー州政府は、排出削減策として40台の100%電動バスを導入したほか、中国代表団などがハイブリッド車を利用しており、会場周辺には電動スクーターも配置されている。ルーラ大統領も、石油探査を容認しつつ、COP30前の気候サミットで「地球は化石燃料依存モデルを支えられない」と述べ、石油大手利益を財源とする「エネルギー転換基金」を提案した。

COP30運営側は声明で、「発電機はバイオ燃料に対応できる仕様であり、都市交通や宿泊船にも排出削減策を講じている」と説明。PBは、「R10型ディーゼル油は、石油由来の留分と大豆油やトウモロコシ残油などの植物性原料を共同処理して製造しており、再生可能成分部分で最大85%の排出削減を実現する」と強調した。


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