米国、パラグアイと地位協定署名=軍配備で中南米プレゼンス強化
米国とパラグアイは15日、米軍がパラグアイ国内で行う安全保障活動、共同訓練、人道支援を規定する「軍隊地位協定」に署名した。これは、米国の最新の国家安全保障戦略(NSS)に沿ったもので、中南米を「優先的な戦略的利益圏」と位置付けるトランプ政権の方針を具現化するものだと15日付G1など(1)(2)(3)が報じた。
米国務省は声明で、トランプ政権の外交政策が明確に示すように、中南米での米国の軍事的な関与を強化する意図が示されたと述べた。マルコ・ルビオ米国務長官は、「我々の半球(米大陸)で最も深刻な問題は、財政的な動機を持つテロ組織の活動であり、これらの組織が地域の安定と安全を脅かしている」と述べ、パラグアイとの強力な協力関係の必要性を強調。同長官はこの協力が防衛分野だけでなく、経済分野にも拡大することを望んでおり、パラグアイの成長潜在力と両国間の経済的絆の強化に関心を示した。
この協定は、米軍と国防総省の職員が、パラグアイ国内での活動を行うための法的枠組みを提供し、共同訓練や人道支援、災害対応を含む広範な協力関係を構築することを目的としている。
「軍隊地位協定」とは、外国軍が他国で活動する際に必要とされる法的な基盤を提供するもの。外国の軍人や国防関係者の権利、責任、法的地位を明確にする。この協定では、米軍の活動がどのように行われるか、双方が共有する安全保障上の利益をどう促進していくかが規定されている。
米国は同協定が両国の関係をさらに強化し、共通の利益を追求する重要な一歩となることを強調。米国務省の声明で、「長年にわたる友好関係を強化し、両国の安全保障上の利益を共有することにより、地域の安定と繁栄を促進するもの」と述べた。
同協定は、米国の新たな外交・軍事戦略の一環として位置づけられている。この戦略は先月発表されたNSSに基づき、中南米を「優先的な戦略的利益圏」として再定義し、米国の軍事的なプレゼンスを強化することを目的としている。
米国は中南米との関係はイデオロギーではなく、商業的側面に基づくものだと認識しており、過去の政権が世界的な支配を目指し、米国に過度の負担を強いたことを反省。そのため、トランプ政権はこの負担を軽減し、米国の利益を最優先する方針を打ち出している。
米国政府は、中南米での影響力を強化するため、軍事的な再配置を進めており、その一環としてパラグアイとの関係強化を決定。この動きはモンロー主義(米大陸は欧州列強の干渉を排除し、米国が地域での影響力を優先するという外交方針)を再確認する形で進められており、「我々の半球」との言葉で表現されることが多い。
今回の協定は、トランプ政権が掲げる「地域安全保障の強化」を実現するための重要な一歩であると同時に、米国の軍事的プレゼンスを維持拡大し、他国との競争を意識した地政学的な動きとしても注目されている。特に、中国やロシアが中南米で影響力を拡大する中、米国は地域の安定と安全保障を確保するために、これらの国々に対抗する意図があるとされている。
この協定に基づく米国の活動には、いくつかの主要な目標が掲げられている。具体的には、米国沿岸警備隊や海軍の適切なプレゼンスの確保、海上ルートの管理、違法移民や麻薬取引の抑制などが求められている。これにより、重要な通行ルートのコントロールや、地域の安全保障が強化される。麻薬カルテルとの戦い、国境の保護も主要な任務となり、過去数十年間続いた法執行中心の戦略を転換し、必要に応じて武力を使用することも視野に入れるようになる。戦略的に重要な地域での米国のアクセス確保や拡大も重要な目的として掲げられ、パラグアイとの協力がこの点で重要な役割を果たすと考えられている。
今回の協定がもたらす影響は、中南米全体に及ぶと見られており、ブラジルをはじめとする周辺国にも注目されている。特に、パラグアイにおける米軍の活動の拡大が、地域内の軍事的バランスにどう影響を与えるかが今後の焦点となるだろう。米国の軍事的プレゼンスの強化は、地域の他国との協力関係にも新たな機会を提供し、パラグアイの防衛能力向上にも寄与することが期待されている。だが、この協定に対しては、中南米内外で懸念の声も上がっており、今後の米国の軍事的な拡大に対する反発や議論が続くことは避けられない見通しだ。








