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銃弾から身を守る「恐竜欲しい」=貧民街に住む子のXマスの願い

2025年12月18日

タリアちゃん(左)とアドリアンくん(Foto: redes sociais)
タリアちゃん(左)とアドリアンくん(Foto: redes sociais)

ファヴェーラ(スラム街)に住む子どもがサンタクロースに宛てた手紙には、彼らが抱える衝撃的な現実が反映されている。プレゼントとして望むのは、銃撃からの身を守るための「保護」や、銃弾によって命を脅かされた兄弟のための支援だ。この願いは、子どもたちが日常的に直面する暴力の現実を如実に物語っており、社会の安全網がいかに脆弱であるかを浮き彫りにしていると14日付G1(1)が報じた。

これらの手紙は、郵便局主催のクリスマスキャンペーン「パパイ・ノエル・ドス・コレイオス(郵便局のサンタさん)」を通じて、全国の子どもから送られたものだ。このキャンペーンは、子どもたちに手紙を書く楽しさを経験させ、認知や感情の成長を促すことを目的に、36年前に始まった。〝クリスマスの魔法〟を実現するため、郵便局は何千人ものパドリーニョ(後援者)を募り、彼らが手紙を引き取って子どもにプレゼントを贈っている。

中には、思わず胸を締め付けられる切実な願い事も寄せられる。北東部バイア州に住む7歳のタリアちゃんは、12歳の兄アドリアンくんのために自動車椅子をお願いした。兄は10年前、サバドール市内で発生した銃撃事件に巻き込まれ、銃弾で脊髄を損傷、下半身不随に。その手紙には「お兄ちゃんは2歳の時に銃で撃たれて歩けなくなりました」と記されており、その現実はブラジルで広がる暴力の影響を物語っている。

事故当時、アドリアンくんは父親と一緒に街を歩いていたが、近隣で発生した銃撃戦で無差別に発射された銃弾により負傷。以来、彼は車椅子での生活を強いられているが、家計は厳しく、自動車椅子を購入する余裕はない。母親のナタリーさんは、アドリアンくんが下半身不随となった後も精神的なサポートを大切にしてきたと語り、日常生活の中で兄妹が一緒に遊びながら困難を乗り越えていると明かす。「息子は座ったままでサッカーをして、娘はいつもそばで支えています」と話した。

リオ市のファヴェーラに住む6歳のピエトロくんとガブリエルくんも、サンタクロースへの手紙に自分たちの不安を訴えている。2人はまだ文字を書くことができないため、教師が代筆を行った。ピエトロくんは「銃声が聞こえると一人でいるのが怖いから、強い恐竜が欲しいです」と書き、ガブリエルくんは「銃が鳴ると怖くて床に伏せるんだ。僕を守ってくれるクマのぬいぐるみをください」と記した。彼らは日常的に暴力が発生する環境で、銃弾から身を守るための「友達」を欲しているのだ。

社会学者エドゥアルド・リベイロ氏は「子どもたちの願いに表れるのは、基本的な生活環境への望みであり、これは国家の失敗を反映している」と指摘。子どもたちの心に刻まれた傷は、一過性のものではなく、生涯にわたり深刻な影響を及ぼす可能性が高いとも述べた。このことは、社会として子どもたちを暴力から守るために、安全な社会的環境を提供することが急務であることを強調している。

暴力の多発地域では、警察の治安維持活動や銃撃戦が頻繁に発生し、その影響を受けるのは常に住民、特に子どもたちだ。子どもの権利の保護と向上に取り組むアラナ財団のアナ・クラウジア・シファリ氏は、「日常的に行われる警察作戦や銃撃戦は、学校の閉鎖や子どもたちの教育機会の剥奪を引き起こす」と指摘し、教育と安全を確保するためには、治安維持の方法を見直す必要があると強調している。

クエスチの世論調査では、5月以降、ブラジル人にとって治安問題が懸念事項のトップであり、6割の回答者が「街を歩くことが安全でないと感じる」と答えている。


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