米国が世界最大空母投入=一段と緊張高まるカリブ海
【既報関連】世界最大の空母「USSジェラルド・R・フォード」とその攻撃群が11日、カリブ海で進行中の米軍展開に加わり、中南米地域で緊張が一段と高まった。米国は麻薬密輸対策を理由に活動を正当化するが、ベネズエラは「帝国主義の脅威」として全国規模の軍事動員を発表。地元漁師は攻撃による死傷者や船舶破壊の報道を受け、沖合での漁に恐怖を抱え日常生活にも深刻な影響が出ている。ロシアや中南米・カリブ諸国共同体(CELAC)、欧州連合(EU)も米国の行動を非難し、国際法順守を求めていると12日付オ・グローボ紙など(1)(2)(3)が報じた。
米国防総省によると、同空母は長さ337メートル、高さ40メートルで、乗組員は5千人以上。2基の原子炉で推進され、最大速度55km/h。中距離ミサイルや地対空ミサイルを搭載し、75機の航空機を運用できる。最新鋭のレーダーを備え、空海域の監視能力を向上させることが可能だ。
空母打撃群には誘導ミサイル駆逐艦、F―35B戦闘機、MQ―9リーパー無人機、原子力潜水艦、特殊作戦支援艦、4500人規模の海兵部隊(うち2200人が海兵隊員)が含まれ、米海軍全艦船の約8%に相当する戦力だ。米国側はこれにより違法行為の監視・阻止能力が向上し、米国領土や西半球での安全保障に資すると説明する。
だがベネズエラ政府は、米国の軍事展開をマドゥロ政権打倒の陰謀とみなし、全国規模で陸海空および河川・ミサイル部隊、民兵を動員すると発表。国営テレビVTVは各州の軍幹部の演説を放送したが、専門家はベネズエラ軍の装備は旧式で規律も十分ではなく、米国との正面衝突では著しい劣勢にあると指摘する。
米国の攻撃は既に太平洋とカリブ海で少なくとも20隻の船舶を標的にし、76人が死亡したとされる。ホワイトハウスは攻撃対象を麻薬密輸業者とするが、現地漁師や人権専門家は、無関係の民間人を巻き込む行為は事実上の司法外処刑で違法だと批判している。
コロンビア北部タガンガ在住の漁師フランシスコ・クエジョ・ガライ氏は「沖合30海里まで出て魚を取るが、密輸とは無関係なのに爆撃される」と語る。漁師たちは恐怖と怒りのあまり、沖合漁を避ける者も出ており、緊張とストレスの中で漁を続けざるを得ない状況だ。別の漁師は「ニュースで仲間の被害を見るたびに恐怖を感じる」と訴え、「漁中にエンジンが故障して沖に流された場合、我々はどうすればいいのか」と問いかけ、軍事緊張が日常生活にまで及び、生業の継続が困難になっている現状を示した。
国際社会も米国の行動を注視している。CELACとEUは、武力行使や国際法無視の行動に反対する声明を出した。ルーラ大統領は、軍事力行使の脅威が中南米の日常に再び浮上していると指摘し、民主国家は国際法を無視して犯罪と戦うべきではないと強調。欧州委員会のカヤ・カッラス副委員長も、武力は自衛か国連安保理決議に基づく場合に限ると述べている。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、米国による船舶攻撃を「違法で受け入れがたい」と非難。「国際法を無視する国の典型的な行動だ」と述べ、麻薬対策を口実にした攻撃を批判。ベネズエラは政治・経済面でロシアへの依存が強く、国際的孤立化の中で米国との緊張を抱える構図が浮き彫りになっている。
一方、マドゥロ大統領は自国軍の対空ミサイル5千基を含む軍事能力について言及し、中国やロシアなどの友好国からの支援で軍事装備や防衛能力を強化していると述べ、米国との緊張下での備えを示唆。これら友好国や国際的な支援者の協力により、ベネズエラは自国の安全保障を維持しつつ平和を確保する態勢を整えていると強調した。








