site.title

ペルーでZ世代の抗議活動激化=ワンピース海賊旗で不満表明

2025年10月17日

万華鏡2
リマのサンマルティン広場での抗議の様子(16日付CBNの記事の一部)

ペルーの首都リマで15日夜、ディナ・ボルアルテ氏の大統領罷免を契機とした大規模な抗議活動が発生し、参加者の1人が死亡した。抗議は若者を中心にSNSを通じて呼びかけられ、「Z世代の抗議」と呼ばれている。デモ参加者は、暫定大統領ホセ・ヘリ氏の辞任や議会解散、新憲法制定を求めており、一部では警察との衝突も発生していると16日付CBNなど(1)(2)(3)が報じた。

リマのサンマルティン広場を中心に展開された抗議活動では、火炎瓶の投てきや花火の使用など、激しい攻撃が警察側に向けられたため、治安部隊は催涙ガスとゴム弾で応戦した。当局発表によると、15日の抗議では負傷者が100人を超え、うち78人が警察関係者、24人が一般市民であることが明らかにされている。ボルアルテ前大統領の罷免以降に発生した一連の抗議活動全体では、警察、抗議者、報道関係者を含め、176人が負傷している。

政府は、抗議の混乱の中でエドゥアルド・ルイス・サンス氏(32歳)が死亡したことを正式に確認した。死因や詳細な状況については現在も調査中だが、人権団体は、同氏が私服警官の発砲によって死亡した可能性があると指摘している。

今回の抗議運動は、ディナ・ボルアルテ氏が10月10日にペルー議会で全会一致に近い122票で罷免されたことを受けて激化した。罷免の理由は、国内の組織犯罪対策における「道義的能力の欠如」や汚職疑惑で、とりわけ「ロレックスゲート」と呼ばれる高級時計の未申告問題が問題視された。

そもそもペルーではボルアルテ氏の失脚前から、年金制度改革に反発する抗議が続いていた。この改革は、18歳以上のすべての国民に対し、民間の年金運用機関への加入を義務付ける内容で、広く国民の不満を招いていた。

「Z世代の抗議」と称される若者主導のデモは、SNSを通じて自発的に組織され、政治への不信感と制度改革への怒りを背景に勢いを増している。この動きは、ペルーにおける若年層の政治的影響力の拡大を象徴しており、既存の政治体制に対する国民の信頼が著しく低下していることを示している。

抗議活動には若者集団「Z世代」に加え、芸術家組合や公共交通労働者の組合も参加。活動の象徴として、日本の人気漫画『ワンピース』に登場する海賊旗(ドクロに麦わら帽子)を掲げる若者も多数見られた。この旗は体制への反抗や自由の象徴として、近年フランスやインドネシアなど世界各地の抗議運動の現場で使用される例が相次いでいる。同作品に登場する主人公たちが腐敗した権力に立ち向かう姿勢が、現政権への不満を抱く若者層の心情と重なるとみられる。

女性団体も抗議に参加し、24年12月に起きたとされる性的暴行疑惑でヘリ氏を追及している。検察は証拠不十分として8月に告発を却下したが、抗議者は「大統領は強姦犯だ」と掲げ抗議を続けている。ヘリ氏はいくつかの汚職疑惑も過去に取り沙汰されており、批判の焦点となっている。

ヘリ氏は右派政治家で、26年7月まで政権を維持し、同年に予定されている総選挙で選ばれた大統領に政権を移譲する見込みだ。同氏は抗議に関し、一部に犯罪者が紛れ込み、混乱を煽っているとして、強い法的対応を警告している。

抗議は首都リマにとどまらず、クスコ、アレキパ、チンボテ、フアンカヨなど国内複数都市に波及。大学は授業を停止し、道路封鎖や公共交通の運休も相次いでいる。

今回の政治危機には国際社会も懸念を示しており、特に米州機構(OAS)はペルーの法治と民主的安定の維持を強く求めている。人権団体や国連機関も警察の暴力行為に関する独立調査を求める声明を出している。

ペルーの政治は今後も混迷が続く見通しであり、暫定政権と抗議者との対話や問題解決に向けた具体的な措置が求められている。


昨年末は6・30レと為替激安=専門家、今年は穏やかと予想前の記事 昨年末は6・30レと為替激安=専門家、今年は穏やかと予想ウルグアイで安楽死法成立=南米で初めて議会立法化次の記事ウルグアイで安楽死法成立=南米で初めて議会立法化
Loading...