植物状態の愛妻連れてブラジルへ=無謀⁈米国から車で陸路帰国

米国で突然の病で植物状態となった愛妻をブラジルに連れ帰るため、高価な航空搬送に代わる手段として夫が選んだのは、11カ国をまたいで約6800キロを50日かけて陸路で移動する長旅だった――。莫大な医療費用と航空運送費用を回避し、改造キャンピングカーで妻を連れ帰るという前例のない計画について16日付G1など(1)(2)(3)が報じた。
ファビオラ・ダ・コスタさん(32歳)は、19年に南東部ミナス・ジェライス州から、家族と共に米フロリダ州に移住。ネイリストとして働き、健康な生活を送っていたが、24年9月、オーランドの自宅で突然病に倒れ、蘇生措置中に3度の心肺停止と肺穿孔を経験。脳への酸素供給不足により重篤な脳損傷を負い、現在も刺激に反応し体を動かすものの植物状態が続いており、24時間体制の介護が不可欠な状況だ。
帰国は今年11月を予定しているが、出発できるかどうかは、10月末までに車両の購入費用を支払い終えられるかどうかにかかっている。ファビオラさんの夫、ウビラタン・ロドリゲスさん(41歳)は、高額なICU(集中治療設備)付きの航空搬送が現実的でないことから、陸路での移動を決断したという。
一家は現在、米国オーランドに居住している。帰路はメキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、コロンビア、エクアドル、ペルーの9カ国を経て、ブラジル北西部アクレ州から入国し、最終目的地の南東部ミナス・ジェライス州ジュイス・デ・フォーラを目指す。総移動距離は6800キロを超す見込みだ。

ウビラタンさんは、旅程において米国南西部の砂漠地帯(ニューメキシコ州、カリフォルニア州、アリゾナ州)を避ける方針を固めている。砂漠地帯を迂回することで走行距離は最大30%増加するものの、医療施設や警察署などの支援拠点が確保できるルートを優先するという。
ファビオラさんは専門的な医療サポートを必要とし、航空搬送の費用は5万〜20万ドル(約752万〜3千万円)と見積もられている。一方、改造キャンピングカーの購入費用は約3万7千ドル(約556万円)だ。車両は固定ベッド、気管切開用のサポート機器、酸素供給設備、医療機器が設置される予定で、ファビオラさんが仰向けで体を横たえたまま、上半身をやや起こした角度で安定して移動できるように設計されるという。
ウビラタンさんは植物状態の妻の介護と、子ども3人(5歳、14歳、17歳)の養育に専念するため、以前のトラック運転手の職を辞した。親族の支援を受けられない異国での生活と過酷な介護環境は、家族に大きな負担を強いており、ブラジルに戻って統一保健システム(SUS)の下で治療を継続したいという強い願いが、この決断の背景にある。
米国税関・国境警備局(CBP)の広報部は、植物状態の患者を伴う国際的な陸路移動に関して、一般的には許可されるものの、米国側の規則および渡航先国の入国要件を遵守しなければならないと説明している。具体的には、車両および乗員の書類の提出が求められ、追加情報や書類確認のため、担当部門への連絡が必要とされる。
改造キャンピングカーには旅の必需品である食料、水、医療機器などが十分に備えられる必要がある。在オーランドブラジル総領事館は、家族に対して心理的および領事的な支援を行っているが、輸送費用に関しては財政的な援助は提供していない。