《ブラジル》SBT大統領選討論会でボルソナロに謎の援軍=ルーラ不在でしらけムード=今回もテベテ印象上げる

24日、SBT局で大統領選候補者らの公開討論会が行われた。だが、支持率1位のルーラ元大統領(労働者党・PT)が欠席し、泡沫候補者のケルモン牧師(ブラジル労働党・PTB)がその場でボルソナロ大統領(自由党・PL)支持を語り始めるなど、終始しらけた雰囲気のまま終わった。25日付現地紙が報じている。
テレビでの大統領選討論会はうまくいけばイメージアップにつながるため、候補者には重要な機会だ。だが、今年は計3回しか行われず、2回目のこの日も、ルーラ氏が欠席したことで盛り上がりに欠けたものとなった。
それに拍車をかけたのがケルモン牧師の存在だった。同牧師は、自宅軟禁で服役中のロベルト・ジェフェルソン氏の大統領選出馬が認められなかったために代理出馬した候補者で、この日まで視聴者にはほとんどなじみのない存在だった。
ギリシャ正教会を代表して来たと自称(後にギリシャ正教側が否定)するケルモン氏は「中絶のビデオを見ろ。あれは殺人だ」と煽り、シモーネ・テベテ氏(民主運動・MDB)がフェミニズムを主張していると批判。この批判は「貴方と話すことはない」と、テベテ氏を怒らせた。
さらにベネズエラやニカラグアの左翼独裁政権の話を持ち出し、「ボルソナロ大統領はブラジルがああいう国にならないように奮闘しているのだ」と礼賛しはじめた。ジェフェルソン氏自身も熱心なボルソナロ氏支持者で、大統領選出馬の目的もボルソナロ氏の援護と目されていた。
この日はルーラ氏が不在のため、ボルソナロ氏に質問が集中することが事前から予想されたが、答弁で大きな議論を巻き起こすことはなく、自身の政権擁護を行っていた。8月28日のバンデイランテス局での討論会で女性ジャーナリストを攻撃したときのような騒動も起こさなかったため、ボルソナロ氏の陣営はこの日の同氏の様子を褒めていた。
ただ、その一方で大統領は連邦議員に対する秘密予算で責められた際、「テベテ氏だって使った」と反論したが、その事実がなかった矛盾点などを指摘されている。
この日の討論会で好評だったのは前回同様、テベテ氏、ソライア・スロニッケ氏(ウニオン)、シロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)で、特にテベテ氏は、「政策面で質の高い議論を展開した」として高い評価を受けていた。
この日、ルーラ氏が不在だったことはボルソナロ氏やシロ氏から強く批判されたが、この討論会の際、ルーラ氏はサンパウロ市東部イタケラで集会を行っていた。討論会に出なかったことに対する一般の評価は賛否両論だった。
また、討論会の休憩中にファビオ・ファリア通信相がシロ・ゴメス氏と会話を行った姿が映し出され、「シロ氏とボルソナロ氏との間で、討論会の談合があったのではないか」との疑念を視聴者らが抱き、物議を醸した。彼ら自身はそれを否定している。
次回の大統領候補の討論会は29日、視聴率1位のグローボ局となる。ルーラ氏は参加を表明している。
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24日のSBTの大統領選討論会の話題をさらったケルモン牧師は、出演時からネットの話題を独占。冗談画像(ミーム)が大量に出回ることとなった。とりわけ、2018年の泡沫候補のカボ・ダシオロ氏との比較が目立った。ただ、国民の反応の大半は否定的なもので、出馬自体が不思議がられている。ボルソナロ氏の援軍になりたがっているケルモン氏だが、ボルソナロ氏にとってありがたい存在なのか。