《ブラジル》大統領選決選投票で残票めぐる争い激化=差は僅かでも逆転は難しいか=カギを握るテベテやシロの票

【既報関連】大統領選はルーラ元大統領(労働者党・PT)とボルソナロ大統領(自由党・PL)の決選投票となり、両陣営とも、一次投票で他の候補に投票した有権者の票の獲得が必至となるが、ボルソナロ氏にはさらに、ルーラ氏に投票した人たちの翻意も必要となる。3、4日付現地紙、サイトが報じている。
一次投票を1位で通過したとはいえ、2日の開票を終えた時点でのルーラ陣営のムードは険しいものだった。それは事前に予想されていた一次での勝利を達成できなかったことに加え、上下両院がPLをはじめとする保守派政党優勢という状況になったためだ。
ルーラ氏にとって、南東部、南部の上議を全て保守派に取られたのが特に痛かった。同氏としては、これらの地域の有権者の翻意が気になるところだ。
一方、ボルソナロ陣営は一次で落選しなかった上、予想以上の僅差だったことで前向きとなり、「逆転は可能」としている。ボルソナロ氏も、選挙前は「6割以上自分に票がこなければ不正選挙」と言っていたのとは一転し、投票結果を疑わず、決選投票に向けた票の確保に努める姿勢を見せている。
ただ、「逆転」を意味する「ヴィラーダ」という言葉がネット上で盛り上がっている状況は確認できない。それは、ブラジルの大統領選史上で最も僅差での決選投票決定とはいえ、ルーラ氏の得票率は48・43%と過半数にあと少しのところまで来ているためだ。また、これまでのブラジル選挙史上で、2位の候補が決選投票で逆転したこともない。
それに加え、ボルソナロ氏にとって約600万票の差を残りの候補者が獲得した約1千万票の中から得た票で埋めるのは容易ではないとの見方もある。
サイト「アンタゴニスタ」が、「3位のシモーネ・テベテ氏(民主運動・MDB)と4位のシロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)の票から70%以上を獲得しなければ逆転はない」と評しているのをはじめ、複数のメディアが逆転は難しいとしている。
それはテベテ、シロ氏の支持者だったが死票を恐れた人は一次投票で票を変えてルーラ氏かボルソナロ氏に投票したと見られている上、両者ともにキャンペーンではボルソナロ氏に対してかなり批判的だったためだ。二人はすでに「自分の政策をルーラ氏が受け入れること」を条件にルーラ氏と交渉を進めており、4日にはシロ氏とPDTがルーラ氏支援を表明。シダダニアもそれに加わった。
また、保守派で5位のソライア・スロニッケ氏(ウニオン)、6位のフェリペ・ダヴィラ氏(ノーヴォ)はすでに中立を宣言。両者の票が全てボルソナロ氏に流れても約100万票あまりだが、本人たちの推薦がなければ勢いはつきにくい。
一方、ボルソナロ氏は経済面の主張や、再選後に自身への支持を表明したロメウ・ゼマ知事のミナス・ジェライス州やクラウジオ・カストロ知事のリオ州などでの票の強化、大敗した北東部対策としてのアウシリオ・ブラジルの支払前倒しなどで逆転を狙っている。
□ミニ関連コラム□
統一選の一次投票が終わったが、国内はまだ大統領選の話で持ちきり。ボルソナロ氏の支持者たちは、ボルソナロ氏や同氏関係の政治家の支持率が実際より低かった世論調査を批判したり、ルーラ氏に多くの票をもたらした北東部を「南キューバ」などと呼んで攻撃している。だが、不思議なことに、選挙前に煽っていた選挙システムの不正に対する疑惑を叫ぶ人はほとんどおらず、国民の大半が投票結果を信じているようだ。差が予想以上に僅差だったことで決選投票も白熱することが予想されるが、今回の一次投票のように、最後まで投票結果を疑わずに選挙が終わることを期待したい。