温室効果ガス排出量の少なさ特筆に値=国内農生産担う大西洋岸森林地帯

非政府団体(NGO)のSOSマッタ・アトランチカが9日、アマゾンと並ぶ世界有数の森林地帯であるマッタ・アトランチカ(大西洋岸森林)で生産する農産物は国内消費の半分強に上るが、温室効果ガスの排出量は農牧業部門の26%に過ぎないとの研究結果を報告したと同日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
地球温暖化(気候変動)は世界的な関心事で、エジプトで開催中のCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)では「世界は地獄へのハイウェーを走っている」「地球が遭難信号を送っている」といった表現が使われるほど逼迫した問題だ。また、この件に関して伯国が採り得る対策の一つは持続可能な農牧業やクリーンエネルギーなどの推進とされている。
そういう意味で、トウモロコシと大豆、サトウキビを除く、国内で直接消費される食用農産物の52%、ゴムや棉、繊維といった非食用農産物の30%、食用、動物の飼料用、エネルギー生産用の大豆やトウモロコシ、サトウキビの43%、動物性食品の56%、動物(牛、羊、家禽類、豚)の62%を生産する大西洋岸森林での温室効果ガス排出量が他地域より小さい事は特筆に値する。
SOSマッタ・アトランチカ事務局長のルイス・フェルナンド・ゲデス・ピント氏は、「国内農業のパラダイムは、ここ数十年間、セラードなどにみられる大規模農家による大規模な単一栽培が主だった。大西洋岸森林の小規模農地で、これだけの農産物を生産し、かつ温室効果ガスの排出量が少ないことは特筆に値する」と強調している。
サンパウロ総合大学(USP)生態学科教授でSOSマッタ・アトランチカのカウンセラー、今回の研究の著者の一人のジェアン・パウル・メツジェル氏は、歴史的に見て、大西洋岸森林はブラジルの食糧の安全保障に貢献してきたと指摘。「1500年に始まったポルトガルの植民地化以来、ブラジルの農業と食料システムはその歴史の大部分を大西洋岸森林に依存してきた。この事はほとんど知られていないが、大西洋岸森林は現在も、持続可能な方法で国民の食糧の安全保障に貢献できる能力を残している」としている。
この研究は、複数の部門にまたがって健康的で持続可能な食料システムについて研究しているUSPのカテドラ・ジョズエ・デ・カストロ(Cátedra Josué de Castro)の支援を得、地理統計院(IBGE)の農牧業国勢調査、マップ・ビオマス(MapBiomas)、ブラジル農牧業アトラス(Atlas da Agropecuária Brasileira)のデータを利用して行われた。