路上生活者いかに救うか=本田弁護士がESG事例を紹介=商議所定例懇親昼食会

ブラジル日本商工会議所(小寺勇輝会頭)は19日、サンパウロ市のブルーツリー・ファリア・リマ・ホテルで定例懇親昼食会を開催した。特別ゲストにホンダタル弁護士事務所の本田エルシオ代表を迎え、「企業におけるESG成功事例―路上生活者をいかに救うか」をテーマに講演を行った。昼食会には約110人が参加した。
冒頭挨拶に立った小寺会頭は、広島で開催されたG7サミットへのルーラ大統領参加で、日伯両国の自由貿易協定やビザ問題、日本企業の投資活性化に資するブラジルの税制改革が進展することへの期待を述べた。

本田氏の講演では、企業が今後、長期的成長を目指すならば、ESG(環境Environment、社会Social、ガバナンスGovernance)に配慮した取り組みが必要となるとして、同氏が代表を務めるNGO「ABCP」(Associação Beneficente & Comunitária do Povo)が2007年から手掛ける路上生活者更生プロジェクトの紹介を行った。
本田氏によればESGへの配慮ができていない企業は、投資家などから企業価値毀損のリスクを抱えているとみなされるという。既にブラジルの10代や20代の若者の間では、ESGに配慮した企業であるかをチェックしてから商品を購入する傾向が高まっているという。

本田氏はプロジェクトを通じて初めてホームレスと接するようになり、彼らがごく普通の善良な市民であるということに気付いたという。
ホームレスになる主要因は、「家庭の問題」、「アルコールや薬物中毒」、「失業」である。現在、ブラジル人口の0・13%の約30万人がホームレスと推定され、パンデミック以降の2年間だけで31%、2012年からでは211%増加した。居住場所は約40%がサンパウロに集中している。
ABCPの路上生活者更正プログラムは、無償で食事や住居を提供するだけでなく、社会復帰までのプロセスを整えている。パートナー企業と提携し、多くの路上生活者を約2年で就職まで導いてきた。
講演会では、17歳の時に家族を失い、薬物依存に陥ってホームレスとなったが、ABCPのプログラムで更正し、現在は土木会社を立ち上げ、社会復帰を果たした男性も登壇した。
本田氏は「最初は弁護士の仕事で精いっぱいで、路上生活者への支援事業とは縁もなかったが、今ではこの活動が誇りとなっている」と話した。