下院=先住民保護区制定を厳格化=反発呼ぶも農牧業界は安堵

下院が5月30日、先住民保護区の制定は1988年10月5日の時点で当該地域に先住民が定住していたかなどを基準とすることを定める法案(PL490/07、通称マルコ・テンポラル)を承認したと同日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じた。

1988年10月5日は現行憲法を公布した日だ。同法案では先住民達がこの日より前から定住し、生産活動や文化的な活動を行っていたことを保護区制定の条件としており、現在は先住民が住んでいても、それ以前の定住や生産・文化活動が確認できなければ保護区制定は拒否される。
また、先住民保護区では非先住民の土地所有や生産活動は実質禁止のため、保護区制定が拒否されれば、先住民居住地域で農牧業を始めた人も立ち退く必要がなくなるし、金などの採掘や隔離されていた先住民との頻繁な接触なども無条件で認められかねない。
下院が失効間際の省庁再編成のための暫定令(MP)審議より同法案の審議を優先したのはそのためだ。283対155で承認との結果は、前政権で中断した保護区制定が加速する前に保護区制定を阻む法案を通そうとする農牧業界からの圧力が、環境保護や先住民の人権を重視する活動家や連邦政府に勝ったことを示す。
同法案を5月30日に緊急審議することは5月24日に決まったが、議長達は結果がある程度見えないと議題としないため、下院による同法案承認はこの時点で予想された。
象徴的なのは、審議直前にカルロス・ファヴァロ農相とソニア・グアジャジャラ先住民相が上院議長を訪ねたことだ。5月30日付G1サイトなど(6)(7)によると、連邦政府は上院で状況を変えることを目論んでいるが、農相は上院議長に対して、「何百年も前から土地を所有して来た生産者が不利益を被るような」土地境界画定はあり得ないとし、同法案を擁護。先住民相は全ての立場の人が参加した審議実施を求め、「先住民の領土境界の承認というルーラ大統領の約束遂行を保証して欲しい」と依頼。同日夜は「法案承認は法的な先住民族の大量殺戮だ」とも主張した。
上院政府リーダーのジャッキス・ワグネル上議(労働者党)は下院の審議方法は間違っており、歴史を40年前に戻したと批判。上院議長は本会議前に同法案を委員会にかける意向と見られている。
30日付フォーリャ紙など(8)(9)(10)(11)によると、連邦政府は上院で状況を変えるよう努める意向で、最高裁が7日に行う同件関連の審理にも期待しているが、同件報告官のアルトゥール・マイア下議(ウニオン)は、法案は16年前から審議されており、ロライマ州ラポゾ・セラ・ド・ソル保護区の農業生産者に退去を命じた2007年の最高裁判決が憲法公布の日を基準にしている以上、最高裁もこの日を基準とすることに同意すると主張。同法案は農業生産者に法的な安全性を保証するとも強調している。