小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=18
コーヒー採集用のラステーロ(地面に落ちたコーヒーの実を掻き集める熊手)の柄に水樽の把っ手を通して背負った太り肉の女、ペネイラ(篩)を輪転がしにしてゆく少年、黒人、白人、原住民との混血、ポルトガル、スペイン、イタリアそれに日本からの移民をまじえた雑多な労働者が、まだ明けやらぬ野の道を往く。墨絵の移動のようだ。
律子は、近ごろ急に親しくなった八代房江を待っていた。同じ航海の仲ではあるが、船内では船室が離れていたため馴染みは薄かった。しかし、同じ耕地に入植してから互いにもたれかかるような生活で、睦まじくなっていた。
房江は目鼻立ちのよく整った娘で、肌の日焼けを防...
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