サンパウロ州=6年生以上デジタル教材化に教育者たちからの批判が続出

【既報関連】サンパウロ州政府が教科書をデジタル化すると決めたことに対し、教育者たちから批判の声が上がっている。1日付フォーリャ紙など(1)(2)が報じている。
これは7月31日にサンパウロ州政府が、教育省の国家教育開発基金からの資金で教科書を購入する国家教科書プログラム(PNLD)に参加せず、2024年から6年生以上の学年は紙の教科書の購入をやめ、同州政府が作成したデジタル教材を使用することに決めたと発表したことに関するものだ(内容は7月31日付フォーリャ紙サイトなど(3)(4)参照)。
カンピーナス総合大学とバイア連邦大学で教鞭をとり、教育政策が専門のテレーザ・アドリアン教授は、「デジタル教材による授業は、インターネット環境など、地域による差を生じさせる上、教師と生徒たちの間に人間を介在させることを不要にしてしまう」と警鐘を鳴らしている。
また、ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)教育政策センター長で、教育者育成を担うシングラリダデス研究所の所長でもあるクラウジア・コスチン氏は、「コンピューターを持たない家庭の生徒はどうやって勉強すれば良いのか。印刷した紙の本は学習者にとって不可欠なものだ」と主張している。
サンパウロ州教育者組合(Apeoesp)はサンパウロ州検察局に対し、サンパウロ州政府による決定プロセスを調査するよう請求を出している。
2日付フォーリャ紙サイト(5)によると、レナト・フェデル州教育局長は、「PNLDが提供している教科書は内容が表層的」でデジタル教材の利用は州内の学校の教育の質を向上させるためとし、「必要なら学校がデジタル教材を印刷すればいい」と語っている。実際の授業では教材をスライドとして投影して説明し、生徒達に書き取らせる方針のようだ。
また、同州政府は下半期に、国税庁が押収して同州政府に提供した携帯電話や電子機器、計2万個を配布し、デジタル教材導入の下準備の一環とする予定だという。