ルーラ「最高裁判事投票を秘密に」=各方面から批判が殺到=ザニン判事かばう言動も

ルーラ大統領は4日、「最高裁判事の投票は秘密にするべき」との発言を行った。自身の指名したクリスチアーノ・ザニン判事の投票内容が物議を醸したこと故の発言だったが、これが最高裁を含めて、反感を買っている。5日付エスタード紙など(1)(2)(3)(4)が報じている。
この発言はルーラ大統領がネット上で毎週放送している番組「大統領との会話」で飛び出したものだ。大統領はそこで、「最高裁で誰がどのような投票をしたかを国民が知る必要はない」と発言。また、「(判事への)反感を生まないように、ブラジルで起きていることを変えるには、このようなやり方(公開投票)ではいけないのではと考え始める必要がある。このままでは、最高裁判事はそのうち、街も歩けなくなるし、家族と一緒に出掛けることもできなくなるだろう」と語った。
この発言は、ルーラ氏自身が現政権で最初に指名したクリスチアーノ・ザニン判事が就任早々に投票に関して批判されたことを受けてのものだった。ザニン判事はラヴァ・ジャット事件の裁判をはじめ、ルーラ氏の担当弁護士を務めてきたため、左派寄りの判断をすることを期待されていた。だが、LGBTや先住民、大麻所持の審理に際し、立て続けに保守寄りの判断を行ったことから、労働者党(PT)内部からも同判事に対する強い批判が起きていた。
だが、大統領のこの発言には各方面から強い批判が相次いでいる。まず、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)が「それでは、透明性の原則が崩れてしまう」と批判した。透明性に関して言えば、ルーラ氏はボルソナロ政権が連邦政府の行動記録を守秘事項としたことに強く反対し、自身の政権でそれを解いて公表するという判断も行っている。
ルーラ氏の発言は司法界でも強い反発を買った。2020年まで最高裁判事を務めていたセルソ・デ・メロ氏は同日中に声明を出し、「社会は判事の投票の内容を知らなければならず、秘密にすることは許されない」との見解を示した。
2021年まで最高裁判事だったマルコ・アウレーリオ・メロ氏も、「伯国の憲法では、判事の投票を秘密にできる余地などどこにもない」と強く批判している。
2016年にジウマ大統領(当時)の罷免請求を作成したことで知られる弁護士のミゲル・レアル氏も、「透明性なきところに民主主義はない」と批判した。
これらの批判が飛び交う中、フラヴィオ・ジノ法相は秘密投票に関し、「議論の余地がある。米国では取り入れられている方法で、大統領ともこのことについて話していた」と語っている。
米国の場合は伯国のように審理の公開生中継は行わず、議事は非公開のため、まず審理結果から発表される。票が割れた場合はどういう意見が判事から上がっていたかが示され、その後にどの判事がどのような投票を行ったかが示されるというやり方だ。
アウレーリオ元判事はジノ法相の発言に対しても、「ルーラ氏を弁護したにすぎない」と批判している。