最高裁任期問題=上院委員会承認で緊迫=リラ下院議長は別案推し=両院ともSTFに圧力

【既報関連】「最高裁判事の任期を短縮する」との憲法改正法案(PEC)を審議したいとの上院の意向に最高裁判事らが異論を唱えた直後、上院が最高裁判事による独裁的な決定を禁止し、見直し要請に制限を加えるPECを持ち出し、ルイス・ロベルト・バローゾ長官が違和感を語った。それに対しアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は任期に関する審議に反対の意向を示したが、代わりに連邦議会の適格過半数(単純過半数を超える任意の定足数)承認で最高裁決定を留保できる憲法改正案を検討すると表明し、両院とも最高裁に圧力をかけている。4日付G1サイト(1)(2)(3)などが報じている。
上院が最高裁判事の任期を定めるPEC審議を求め始めたのは、マルコ・テンポラルや大麻所持の非刑罰化、12週を超えた中絶の非刑罰化など、最高裁が上院の審議結果に沿わない判事投票結果を出したことを不服としたためだ。
任期問題は、ロドリゴ・パシェコ上院議長(社会民主党・PSD)が同件を「審議する必要がある」としたことに、ジウマール・メンデス判事が「本当は司法の指名システムまで変えたいのでは」と反論したことでさらに拡大した。
さらに4日には、上院憲政委員会(CCJ)が、最高裁判事による独裁的な司法判断を禁じ、見直し請求から審理再開までの日数を制限するPECを40秒間で承認した。上院は2019年にも同じ内容のPECを本会議で審議したが、賛成票が規定数に届かず、却下している。なお、見直し要請後の審理停止期間は6カ月とし、3カ月の延長を認めるという点は、最高裁が昨年12月に6カ月に内部で決定している。
独裁的な司法判断とは、最高裁判事が単独で一般的な効力を持つ法律や規範法の有効性や大統領や上下両院議長の行為を停止する例や、公共政策に影響を与える立法提案の処理の一時停止、全ての権力に経費を捻出する権限を伴う決定だ。司法判断は即有効となるが、PEC承認後は、大法廷や小法廷で承認してしか発効しなくなる。
こうした事態を受け、バローゾ長官は4日に急遽、声明を発表。「議題にタブーはない」とし、議題を選ぶ自由を認めながらも、「個人的には、現在は最高裁の規定を変更する理由が見出せない。今がその時だとは思わない」と語った。
同長官は上院が最高裁判事の任期を8~11年に制限しようとしていることに関して、「ドイツでは12年間、米国では75歳の定年まで無制限というブラジルのスタイルに近い終身職だ。どちらにも良い面と悪い面がある」としながらも、「議論をすること自体はその意思を尊重する」とした。
また、独裁的な司法判断禁止に関しては、「昔から問題にされることが多い。ジェツリオ・ヴァルガス大統領時代の1937年憲法でも採用されたが、良い前例とは思えない」と語った。
一方、アルトゥール・リラ下院議長は4日、「三権のいずれもが尊重されなければならない」とし、「憲法の定める範囲を超えてはならない。連邦議会もそれに従うべきだ」と発言した。同議長は最高裁判事の任期に関しても、「それを審議することで連邦議会と最高裁の関係が良くなるとは思えない」とし、個人的には反対との意向を表明している。
最高裁が主に保守派が嫌う審理結果を出したことには下院でも不満を表明する議員が多く、9月28日付カルタ・カピタル(4)によれば、ドミンゴス・サヴィオ下議(自由党・PL)が出した連邦議会の適格過半数承認で最高裁決定を留保できるPECを検討する特別委員会設置を、リラ下院議長は約束している。