ルーラ=遅れる検察庁長官指名=1カ月超の異例の事態=大統領捜査請求出せる重職

前任のアウグスト・アラス氏がPGR長官を退任したのが9月25日で、本来ならその翌日から次期長官が就任するはずだった。だが、ルーラ大統領はいまだに長官の指名を行わず、エリゼッタ・マリア・デ・パイヴァ・ラモス副長官が代行を務めて1カ月が経過している。
PGR長官の指名がここまで遅れるのは、民政復帰後の30年余りの歴史の中で2度目で、1989年に当時のジョゼ・サルネイ大統領が、新任期34日目にアリスティデス・ジュンケイラ・アルヴァレンガ氏を指名して以来の遅さとなっている。
同長官職は、連邦公共省(MPU)と連邦検察庁のトップを兼ね、唯一、大統領の捜査請求を最高裁に出せる役職だ。また、閣僚や連邦議員のように、不逮捕などの特権を持つ人物に対する捜査を行うことが可能な強い権限を持つ役職でもある。そのような重要職の就任が大幅に遅れていることに対しては、懸念の声も上がっている。
ブラジル犯罪科学研究所の弁護士のレナト・スタンジオラ・ヴィエイラ氏は、「この遅れは深刻だ。上からの方向性がないことで多くの検察官の捜査が不確かなものになってしまう」と、警鐘を鳴らしている。
サンパウロ弁護士研究所のマリーナ・コエーリョ・アラウージョ氏も、「ラヴァ・ジャット作戦での過ちで検察の権威が失墜しているタイミングで方向性が見えないのは痛い」と危惧している。
G1サイトによると、ルーラ大統領はエリゼッタ長官代行に対し、ルイス・ロベルト・バローゾ最高裁長官の就任式で1度だけ、手短に「もう少しだけ待ってくれ」と伝えていたという。
次期長官が決まらないことに焦りを感じているのは、ルーラ氏の労働者党(PT)も同様だ。PTは、エリゼッタ長官代行はかつて、ルーラ氏を実刑に追い込んだラヴァ・ジャット作戦担当判事だったセルジオ・モロ氏をボルソナロ政権の法相に指名することを支持していたため、PT関係者は長官決定を9月の時点から急がせていた。
25日付メトロポレスは、ルーラ大統領は今週にもPGR長官の指名作業に確実に戻るだろうと報じている。大統領は先月末に股関節の手術を受けて以来、公務のペースを落としている上、ガザ危機を巡る調停の問題なども抱えていた。
また、長官候補はこれまで、最高裁の一部勢力が推すパウロ・ゴネ・ブランコ副長官か、PTの推すアントニオ・カルロス・ビゴーニャ選挙検察副長官が有力とされてきたが、ここに来て、アウレーリオ・リオス副長官やルイス・アウグスト・サントス・リマ副長官の名前もあがりはじめたという。特に、アウグスト氏はジョゼ・サルネイ元大統領が強く推薦しているという。