大統領令で軍が港湾空港の治安維持=サンパウロ州とリオ州で6日か

ルーラ大統領が1日に出した大統領令により、「法と秩序の保証(GLO:Garantia da Lei e da Orden)」のためのオペレーションが6日から始まったと同日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じた。 この大統領令により、リオ州とサンパウロ州の港湾・空港や国境地帯では、軍が公安機関と協力して犯罪予防や治安行動を実施することが可能になる。GLOはそれに必要な警察権限を軍に与えるもの。深刻な治安や秩序の乱れが生じ、公共の秩序や国民の安全を維持するために、警察だけでは無理だと判断した際に許可される。大統領自身の判断か、知事や上下両院議長、最高裁長官からの要請によって適用される。
テメル政権末年にリオ州の治安維持のために行われた連邦政府による介入はGLOの一例。1月8日に起きた三権の中枢施設襲撃事件後に連邦直轄区に対して行われた治安介入、2016年のリオ五輪や2014年のサッカーW杯などの大型イベントでの警備強化のためにも使われてきた。
1日付G1サイトなど(6)(7)(8)(9)によると、今回のGLOは、リオ州とサンパウロ州の港や空港、国境地帯の3領域に焦点を当て、3軍の兵3700人を派遣するものだ。海軍1100人と空軍600人の派遣先はリオ州のイタグアイ港とリオ港、サンパウロ州のサントス港、リオ州ガレオン空港とサンパウロ州グアルーリョス空港で、パラナ州やマット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スル州の国境地帯での取り締まりも、陸軍兵2千人が増員される。パラナ州内陸部のイタイプ湖には海軍も派遣される。3軍兵士には警察権なども付与される。
GLOの主目的はリオ州とサンパウロ州の犯罪組織の勢力拡大抑制で、国境地帯や消費市場での麻薬や武器の密輸、輸送、売買を困難にし、麻薬や武器の売買で富を得ている犯罪組織を財政面から窒息死させることで、24年5月まで適用される。リオ州では特に、ファウストンと呼ばれるミリシア死亡後にバス35台が焼き討ちにされるなど、混沌とした状況が深刻化している。
なお、通常のGLOは現地の警察組織や連警、連邦道路警察なども連帯して作戦を展開するが、今回の作戦での軍の活動は以前から国の責任だった領域に限られ、市警や軍警の活動には介入しない。
ルーラ大統領は軍と民間の衝突が連邦政府にも波及することを懸念し、路上やファヴァ―ラへの軍の配備に反対していたが、5日付メトロポレスなど(10)(11)は、フラヴィオ・ジノ法相がGLOは州全域で実施する必要はなく、細分化も可能と説得し、大統領令発令にこぎつけたと報じている。
3日付エスタード紙サイト(12)によると、サンパウロ総合大学法学教授で前下議のジャナイナ・パスコアル氏はサントス港とグアルーリョス空港へのGLO適用は州の独立性を損なうと批判したが、サンパウロ州のタルシジオ知事は、サントス港は国際的な麻薬取引の拠点となっており、治安向上のための取り組みであるGLOや、治安強化のための公的機関の協力は必要とし、作戦は時宜にかなったものとの考えを連邦政府にも伝えたと語っている。
6日付エスタード紙など(13)(14)によると、野党側は既に大統領令の差し止めか変更に向け、行動をとり始めているという。