サマルコ=鉱滓ダム決壊から8年=補償遅れ被災者55人死亡

2015年11月5日午後、ミナス州マリアナのサマルコ社ジェルマノ鉱山で起きたフンドン鉱滓ダム決壊事故から8年が過ぎた。
ウイキペディア(1)によると、安全保証書も出ていたダムの決壊で流出した鉱滓(鉄鉱石の採掘時に出る廃棄物)は6200万立方米に及び、ベント・ロゴリゲス地区を直撃して現場の作業員や住民19人の命を奪った後は、パラカツ・デ・バイショ地区やジェステイラ地区を経てドセ川に流入。エスピリトサント州や同川が流れ込む大西洋にも及ぶ広域汚染を引き起こした。この事故はブラジルでの史上最大の環境災害で、流出した鉱滓量では世界最大だ。環境への影響は100年は残るという。
この事故ではドセ川流域から大西洋岸に至る2州230市の住民約100万人が、川の汚染で飲み水が取水できず、農産物や水産物も安心して食べられないといった被害に直面。生計がたてられなくなった農業や漁業の従事者もいる。
地域住民や被災市への補償は、サマルコ社とその親会社のValeとBHPビリトンが連邦政府やミナス、エスピリトサントの両州政府と結んだ改善対応誓約書に基づいて創設されたレノバ財団が担当しているが、4月28日アジェンシア・ブラジル(2)によると、移転後の新ベント・ロドリゲス地区住民に提供された新住居は今年4月の4軒のみなど、対応は遅れている。21年3月4日付レポルテル・ブラジルなど(3)(4)によると、21年3月の時点では既に55人が住居を受け取れないまま死亡するなど、期限後も引き渡しが遅れている。
事故から2年後の2017年11月3日付アジェンシア・ブラジル(5)が報じたような、うつ病などの精神的・肉体的な病気の追跡報告は出ていないが、7日付ウン・ソ・プラネタサイト(6)によれば、15被災市住民の56・31%は不動産の価値下落を嘆き、3分の1はいかなる賠償制度も利用できなかったと答えた。80%以上は仕事の保証や収入の創出、健康増進のための対策が必要と考えているという。9月26日付G1サイトなど(7)(8)(9)(10)も、被災者と認めてもらえないと嘆く声など、8年間の苦悩の一部を紹介。10月19日付アジェンシア・ブラジル(11)によると、検察も速やかな補償実施を求めている。
マリアナの事故と2019年1月に同州ブルマジーニョで起き、270人が死亡したValeの鉱滓ダム決壊事故は、アップストリームと呼ばれる上乗せ型のダム解体やダムを使わない廃棄物の処理方法の開発と普及、廃棄物を使ったレンガの製造などを促すことになったが、11月4日付フォーリャ紙サイト(12)にあるように、決壊の可能性のあるダムはこれ以外にもあり、退去した住民が戻れないままの町もあるなど、採掘業界を取り囲む環境はまだまだ厳しい。
なお、マリアナの事故では、ValeやBHP、サマルコとダムの安全を保証した会社並びにその役員など、法人4人と個人22人が告訴されたが、個人15人は既に訴訟対象から除外された。6日付CNNブラジルサイト(13)によると、訴訟対象の4法人、7個人の裁判は時効となる罪状も出るほど遅れており、6日になってやっと被告尋問が始まった。