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ミレイ公約=ドル化や中銀廃止は困難=G1専門家が可能性分析=議会少数派、難問山済み

2023年11月23日

ミレイ氏(X)
ミレイ氏(X)
 アルゼンチンで中銀廃止、ドルを公式通貨にするなどの大胆な政策を掲げて大統領に当選したハビエル・ミレイ氏が掲げた公約に関し、21日付G1サイト(1)が独自に、どの法案が実現可能で、どれが難しいかなどの分析を行った。大半の提案は議会承認が必要なので、多数派形成ができるかに依存し、仮に承認されたとしてもドル化案などは最高裁で異議を唱えられる可能性があるという。

 この報道でG1サイトは政治学者のマリーナ・ペラ氏と国際政治を専門とするマウリシオ・サントロ教授にミレイ氏の政策の実現可能性を検証させている。
 まずドルを公式通貨にすることに関して言えば、両氏ともに憲法改正法案を承認させる必要性があると指摘する。ペラ氏は「通貨を変えることは、その行為自体が違法と見る向きもあり、仮に議会で承認されても最高裁で却下される可能性がある」とも指摘している。同国最高裁のオラシオ・ロザッティ長官はすでにそのことを公言している。
 サントロ氏はドル化に関して、すでに実施済みのパナマやエルサルバドル、エクアドルなどと違って、アルゼンチン・ペソのドル化には少なくとも外貨準備高350億ドルが必要と指摘。現状では中銀には200億ドル程度しかないという。
 同氏によれば、ドル化した同3カ国の経済特性はアルゼンチンとは大きく異なると強調。経済規模が小さく、対外貿易において米国と元々密接な関係にあると指摘した。アルゼンチンの米国への輸出は8%に達しない程度であり、最大の貿易相手国が伯国と中国で、大規模で複雑かつ多様な経済を持つ亜国とはケースが異なるとする。
 また中銀廃止に関してペラ氏は「公的機関廃止を可とする法律をまずは通過させないとならない」とし、「それもドル化が済んでからの話だ」と指摘している。
 ドル化して中銀を廃止した場合、自国で経済基本金利の決定や通貨発行量の調整などのインフレ対策ができなくなる上、外貨準備高の管理も不可能になるなど、経済の舵取りが難しくなる危険性がある。
 またBRICS加盟の見直しやメルコスル離脱に関し、サントロ氏は「BRICS入りは断りさえすれば良いが、メルコスルの場合は発足当初からの加盟国であり、1991年に締結された憲章もあるので、その変更が必要となり複雑」と見ている。
 ペラ氏は「メルコスルに関してはミレイ氏自身がキャンペーン時にすでに態度を軟化させている」と語り、アルゼンチンの企業家にとってメルコスルの離脱に旨みがないとしている。
 また経済以外で、「刑事責任年齢を18歳から14歳に引き下げる」「銃の大幅な自由化」などの法律改変に対し、サントロ氏は「手続き的には改正法案を出せばいいだけのこと」としながらも、「ミレイ氏の政党の自由前進の下院での議席が15%しかない。他政党との協力なしでは法案そのものが通らない」と見ている。
 サントロ氏は、中でも難しいのは中絶非合法化で、「(次点に終わったセルヒオ・マッサ氏の政党の)愛国連合が議会の多数派であり、愛国連合の政府がすでに合法化させた。それをすぐに変えるのは難しい」としている。
 ミレイ氏の議会での弱点はペラ氏も指摘。「公社の民営化などは議会を通さないとならないが、自由前進が現状で下院37、上院8しか議席がないため、中道右派の『共に変化』の支持を強固にえなくてはならない」としている。


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