site.title

虚偽発言は報道にも責任=最高裁判決に反発広がる

2023年12月1日

最高裁「正義」の像(Foto: Gustavo Moreno/SCO/STF)
最高裁「正義」の像(Foto: Gustavo Moreno/SCO/STF)

 最高裁(STF)は11月29日、新聞、雑誌、ニュースポータルなどの報道機関の取材対象者が第三者に対する虚偽の主張を行った場合は、報道機関が検証を怠ったために精神的および物質的な損害などが発生した場合、被害を受けた第三者は報道機関に対して民事上の責任を追及できるとの判決を下した。これに対して報道や司法の関係者から「報道の自由を揺るがし、メディアを弱体化させるもの」と反発が挙がっている。11月30日付エスタード紙など(1)(2)(3)(4)が報じている。
 最高裁はこの決定を9票対2票で下した。判決の中で、「被取材者が、第三者が犯罪を犯したと虚偽の告発をした記事が掲載された場合、報道機関が民事責任を問われるのは以下の場合に限られる。(1)出版時にその虚偽の主張に関する具体的な証拠があった場合、および(2)情報の真実性を確認し、その証拠の存在を開示する注意義務を怠った場合」とある。
 最高裁はまた、事前検閲は禁止されており、検証の不備がなければ罰せられないことも強調した。また、報道機関が「侮辱的、中傷的、誹謗的、または虚偽の情報」を公表したことが証明された場合、その内容が裁判所の命令により削除される可能性があることも定めた。判決には、「名誉、プライバシー、私生活、および自己画像に対する権利は、人間の尊厳に対する憲法的保護を構成し、不正な外部の干渉から守られる不可侵の領域を形成する」とも述べられている。
 この議論はリカルド・ザラティーニ・フィーリョ元下議による訴訟に端を発しているが、この判決は国内の全ての裁判官や裁判所にとっての指針(判例)として機能し、その影響は大きいといえる。
 この判決に対し、報道協会は共同声明を発表した。「ジャーナリズムは事実検証や矛盾への寛容など、職業の基本的な原則に従って倫理的に遂行されることが不可欠である(中略)が、これはジャーナリズムの中で最も重要な形式と手段の一つである取材に起因する訴訟の永続的な脅威と混同されてはならない」とし、各団体は、この決定がジャーナリストに対する司法的嫌がらせの拡大に繋がることを懸念している。
 また、最高裁元判事であるマルコ・アウレリオ・メロ氏は、この判決がジャーナリズム全体に対して「総合的な不確実性」をもたらすものであり、ジャーナリストを「脅かす」と主張。真実か否かを確かめるための調査を強いることになり、ジャーナリズムの情報スピードにそぐわない主観主義だと意見した。
 一方で、この判決にある「侮辱的、中傷的、誹謗的、または虚偽の情報」という曖昧で不透明な文言は理解しにくく、これを取材中に判断することが難しいことや、生配信取材に対する不安が指摘されている。今後、報道機関を法的に脆弱な状態に追い込む可能性があり、報道の自由に対する危険性をもたらすと批判されている。
 なお、ルイス・バローゾ長官は、この判決は悪意をもって適応された冤罪の場合に適用されるとの見解を示している。(5)


タルシジオ=電車料金の値上げを示唆=ヌーネス・サンパウロ市市長が反対前の記事 タルシジオ=電車料金の値上げを示唆=ヌーネス・サンパウロ市市長が反対ルーラ側近下議=職員にピンハネ要求疑惑=ネットで大統領選に貢献=捜査要求や罷免の動きも次の記事ルーラ側近下議=職員にピンハネ要求疑惑=ネットで大統領選に貢献=捜査要求や罷免の動きも
Loading...