ベネズエラ=隣国領土の領有権主張=国民投票で96%賛成=戦争勃発の懸念高まる

3日、ベネズエラでガイアナのエセキボ地区の併合を問う国民投票が行われ、ベネズエラ政府の関係者らが「96%の国民の支持を得た」とし、併合に意欲を見せた。これに対し、ルーラ大統領は南米大陸内での戦争の懸念を隠さなかった。4日付UOLサイト(1)やG1サイト(2)が報じている。
3日に行われたベネズエラでの国民投票は現地時間の朝6時に始まり、20時まで続いた。
同国全国選挙委員会(CNE)のエルヴィス・アルモーゾ委員長によると、今回の国民投票では1055万5400票が投じられ、その結果、国民の95%がエセキボ地区の併合に賛成したという。同国の人口は約2千万人だ。
自らも軍本部で投票を行うなど、国民にアピールしていたニコラス・マドゥーロ大統領は結果発表後、首都カラカスのボリバル広場で声明を発表。「この結果は、先祖が我々のために残してくれていた地域を取り戻すための戦いにおける勝利だ」と高らかに言い切った。
もっとも、今回の国民投票は実施前から国際的に物議を醸していた。国際司法裁判所は1日、ガイアナ側の主張を受け入れ、国民投票の実施を行わないよう勧告を出していた。だが、同国政府は国際司法裁判所の判断を認めておらず、判決を無視して今回の投票を強行した。
エセキボ地区のめぐるベネズエラとガイアナの争いは19世紀にまでさかのぼる。当時のガイアナはイギリス領だったが、その時代にエセキボ川から居住地域を拡大。それがベネズエラ西部にまで及んだことで対立が始まった。
同件を巡っては1899年のパリ仲裁裁定、ガイアナ独立直前の1966年のジュネーブ協定でエセキボをガイアナ領とする判断がなされたが、ベネズエラはいずれにも反対してきた。
ヴェージャ誌(3)によると、これに対し、ガイアナのイルファン・アリ大統領は改めて国民投票の無効を主張。「ベネズエラが脅してこようが、何も恐れることなどない」と徹底して反抗する意向を示した。
エセキボ地区はガイアナ国土全体の約3分の2を占めており、国の産業の柱となる豊かな埋蔵量を誇る油田もある。同地区を失うことは国の存亡に関わる問題といえる。
今回の問題は、来年の大統領選で民主的な選挙実施の約束をと米国から求められているマドゥーロ大統領に新たな火種を作ることにもなっている。
この問題は北部のアマパー州で両国と国境を接するブラジルにとっても大きな問題だ。領土問題は戦争に発展しかねない問題で、戦争がなくとも、両国の愛国者たちによる暴力的な行為が国境付近で起こりかねないためだ。
同件に関し、ルーラ大統領は3日、滞在先のドイツから声明を発表。「南米に争いはいらない」「人間なら誰しも戦争は恐れるもの。それは良心が足りなくなった時に起こるものだ。良心で対話をしてもらいたい」とけん制した。