ベネズエラ=ガ・エセキバ州創設法案=油田探査、学校に新地図=ブラジル軍は国境警備強化

ベネズエラのマドゥーロ大統領は5日、ガイアナのエセキボ地域をベネズエラの領土と宣言し、自国の石油公社に同地域での石油探査のライセンスを与えるよう命じた。これに危機を感じたブラジルは陸軍の装甲車28台を両国との国境付近に追加で配備する。5日付G1サイト(1)(3)(5)やCNNブラジル(2)(4)が報じている。
マドゥーロ大統領は5日、国民議会のホルヘ・ロドリゲス議長に、ベネズエラにガイアナ・エセキバ州(ベネズエラ式名称「Guiana Esequiba」)を創設するための法案を提出した。同大統領は、3日に行われた国民投票で国民の95%がエセキボ併合に賛成したことで、ベネズエラ領であるとの判断を行っている。
この国民投票は、ガイアナ側の訴えを受けた国際司法裁判所が事前に実施を取り止めるように言い渡したのを無視して強行されたものだ。この国民投票が国際的に有効か否かはまだ不明だが、ガイアナのイルファン・アリ大統領は既に、国連の安全保障理事会に訴える意向を示している。
そのような状況下でマドゥーロ大統領が国民議会に行った提案は、新州創設のための議論とガイアナ・エセキバ防衛のための基本法承認、石油公社PDVSA内にエセキバ部門を創り、同地区での石油や天然ガス、鉱物資源の探査のライセンスを出す、ガイアナ・エセキバの居住者への社会福祉計画作成と身分証明書の発行、同地域防衛高等委員会の創設、ロドリゲス・カベージョ氏を同地域の暫定統治者に指名する、学校での教育用にベネズエラの新しい地図を作成することなどを定めている。
同地域はガイアナの国土面積の約70%を占め、国の財政を支える豊かな埋蔵量を誇る油田もある。ベネズエラも石油が国の主要産物だが、同地域を確保すれば、同地域内と海洋の油田が増強される。
こうした両国の状況に危機感を覚えたジョゼ・ムシオ・モンテイロ国防相は5日、警備強化のために装甲車両28台をロライマ州に追送することを決めた。これらの車両は州都ボア・ヴィスタまで送られているが、必要ならば国境のあるパカライマ地区での国境警備補強に乗り出すつもりだ。警備の兵士の数も130人から150人増やす意向だ。
追加配備される装甲車両は、グアイクルス(ジープ)16台、カスカヴェル6台、グアラニ6台となっている。カスカヴェルは主砲が90ミリ砲、副砲が7・62ミリの機関銃二つで、6基のスモークランチャーも備えている。100メートル(角度90度)からの7・62ミリの装甲貫通砲や50メートルでの一般的な7・62ミリ砲からも守る装甲となっている。グアラニは水陸両用の装甲兵員輸送車で、7・62ミリ砲弾や155ミリ砲弾の破片に耐える。車両重量は14・7トンで出力は383馬力、時速100キロまでの走行が可能だ。
このようにベネズエラ、ガイアナ間での緊張感が高まり、ブラジル側の国境対策も厳しくなってきているが、フォーリャ紙(6)によるとマウロ・ヴィエイラ外相は6日、リオ市で開かれた会合で、連邦政府はベネズエラとガイアナが武力衝突を起こす可能性は低いと見ていると語っている。