連邦議会=大統領の拒否権を覆す=給与税や先住民法案で

連邦議会が14日にルーラ大統領が法案裁可時に行使した拒否権に関する合同審議を行い、給与税軽減(デゾネラソン)延長法案や先住民居住地認定は現行憲法公布日を基準とすることを定めたマルコ・テンポラル法案などで、13件の拒否権行使を全面的または部分的に覆したと同日付ポデール360(1)が報じた。
14日付G1サイトなど(2)(3)(4)によると、デゾネラソン法案での拒否権拒否は上院60対13、下院378対78の大差で決まった。この税収減により、政府支出は184億レアル増える。
同法案はジルマ政権で導入した給与税軽減策を4年間延長するもので、議会が承認した法案をルーラ大統領が全面拒否した後、企業家や労働者も含む形の抗議行動が起きていた。13日付G1サイト(5)によると、抗議行動は13日も起きている。
給与税軽減は雇用者が多い17部門の企業や小規模の地方自治体が対象で、給与支払い時に納める社会保障関係費(通常は給与総額の20%)を総収入の1~4・5%とすることで社会保障関係費の負担を減らす代わり、雇用確保を義務付ける。この措置は今年一杯有効だったが、業界の要望もあり、4年間延長を決めたところ、大統領が拒否権を行使した。
議会や業界が拒否権行使を歓迎していないことは政府も理解しており、財務省が代替案提示を約束したが、大統領の認可の遅れなどで、代替案提示前に拒否権審議となった。
14日付アジェンシア・ブラジル(6)によると、ハダジ財相は14日、議会が拒否権の審議を急いだため、代替案提示を先延ばししたが、来週には暫定令(MP)か法案(PL)の形で提示すると明言。代替案は、社会保障関係費の減収分を他の税収増で埋めるため、来年度予算案には影響しない。大統領は延長法案を全面拒否した際は、減収分を補う方法が定められておらず、違憲と判断していた。
14日付G1サイトなど(7)(8)(9)によると、マルコ・テンポラル法案は、上議53人と下議321人が拒否権拒否に賛同。拒否権を擁護した上議は19人、下議は137人だった。
拒否権拒否に賛同した議員達は、現在ですら1・14億ヘクタールに及ぶ先住民族居住地を1・2~1・3億ヘクタールに増やすことは、それらの地域で農牧業を営む人の生活を脅かし、法的な安定性を揺るがすなどの理由で、憲法公布日に先住民族が住んでいたか係争中だった土地のみを認めるべきと主張した。
他方、拒否権行使擁護派は、拒否権行使は社会との対話と先住民族への敬意を踏まえたもので、昔から住んでいた先住民族の権利を奪い、生命や教育、領土への権利を危険にさらすものと主張した。
14日付アジェンシア・ブラジル(10)によると、先住民族は即座に最高裁に訴える意向を表明。憲法公布日をタイムラインとする仮説は最高裁も違憲との判断を下しており、今後のやり取りが注目される。
なお、14日付G1サイト(11)によると、拒否権拒否は財政均衡法案でも起きた。
14日付G1サイト(12)(13)によると、大統領は13日、拒否権審議に関してアルトゥール・リラ下院議長と会合を持ち、財政関連の重要法案の審議を進めるために拒否権拒否の審議を行うことを認めた。この合意を反映するように、14日からは税制改革法案などの審議が加速している。