法相=連邦刑務所の警備強化=潜伏脱獄犯を厳重包囲


【既報関連】14日未明に国内最高の厳戒態勢を敷いているはずの連邦刑務所の一つで収監者2人が脱獄したことを受け、法務省が連邦刑務所の警備体制強化を決めると共に、法相も現地に赴き、捜査員達を鼓舞した。
法務省は事件当日に脱走事件が起きたリオ・グランデ・ド・ノルテ州モソロー刑務所の管理責任者らを更迭し、暫定所長に連邦刑事警察官のカルロス・ルイス・ヴィエイラ・ピレス氏を任命。モソロー刑務所を含む連邦刑務所での日光浴や家族、弁護士などの訪問受け入れの差し止めや、連邦刑務所の警備体制や安全基準の見直しも決めた(16日付弊紙サイト(1)参照)。
15日付アジェンシア・ブラジル(2)によると、リカルド・レワンドウスキー法相はその後も、全ての連邦刑務所の監視システムの近代化や、所内へのアクセスのコントロール強化、そのための顔認証システム導入などを決めた他、警報システムやセンサー網を拡大し、警護壁を設けることなども矢継ぎ早に発表した。
また、公務員採用試験合格者から80人を連邦刑務警察官に任命するための要請書も提出。その一部はモソロー刑務所に回される。
一方、15日付G1サイトなど(3)(4)によると、モソロー刑務所から脱獄した収監者2人の再逮捕のためには、連邦警察官100人、連邦道路警察官100人、北大河州の警察官100人が充てられ、3機関のヘリ計3機と体温を感知するセンサー付ドローン、警察犬も動員した捜索が続いている。

レワンドウスキー法相らは、脱走時に二人を迎えに来た車両はなく、刑務所周辺で車が盗まれたという被害届も出ていないことから、刑務所から半径15キロ以内の農村部に潜んでいる可能性が強いと見ている。また、事件直後に刑務所にほど近い農家から、服や食料が盗まれたという届け出があったことで、二人が地域に潜んでいるとの見解を明らかにした。
17日付G1サイトなど(5)(6)によると、脱走犯達は16日夜も刑務所から3キロの農家に侵入して人質を取り、食事をすると、携帯電話2台と食料、包丁を持ち去った。被害者の男性は17日未明に兄弟の家まで行き、検問中の警官を探して状況を届け出た。
連邦刑務所初の脱獄事件が起きた原因究明のための捜査は2種類ある。一つは懲戒責任を追及するための行政的な捜査で、もう一つは、連警が行う、刑事責任の可能性と2人の収監者の逃亡を助けた可能性のある人物の有無を判断するための警察捜査だ。18日付アジェンシア・ブラジル(7)によると、ルーラ大統領は18日、刑務所内の管理が甘くなっていたか、所内の出来事に目を瞑るなどして逃亡を助けた人物がいるはずだと述べたが、実態解明には今後の捜査を待つ必要がある。
15日付G1サイトなど(8)(9)(10)(11)(12)によると、脱獄犯達は独房の壁や机替わりのコンクリートの台を壊して取り出した鉄骨を使い、壁にある照明の蓋や枠を外し、電気の線や各種のパイプ、機械、階段まであるシャフトに入ると、建物の屋根裏に到達。屋根裏は鉄枠や柵、コンクリートスラブもなく、屋根の一部を外して屋根の上に出ると、中庭に飛び降り、警護壁建設のための工事現場にあった大型ペンチを盗んでフェンスを切り、敷地外に出たという。
法相は、「刑務所内の工事現場で使用した道具は施錠して保管することになっているが、脱獄犯達は施錠されているはずの工事現場にあったペンチを使った」と説明している。
法相は、独房を抜け出してから敷地外に出るまでの映像が一切残っていないことなど、管理上、構造上の様々なミスも重なって起きた事件(18日付G1サイト(13)も参照)であることも認めており、18日に現地に飛ぶと、国家刑務政策局長や連警などとの会合後、北大河州知事や近隣市市長らとと共に会見を行い、刑務所内の問題は修正済みで、現地当局の協力も得た捜査員は500人規模に増員、土地が入り組んでいることや雨で難航しているが、全力を挙げて犯人再逮捕に努めていると強調した(18日付G1サイトなど(14)(15)(16)参照)。
連邦道路警察は高速道を使って逃亡する可能性を予測し、国境警備関係者とも連絡を取っている。逃亡者としての国際警察への連絡や登録も完了している。
15日付アジェンシア・ブラジル(17)によると、二人が所属しているのはリオ州が本拠の麻薬密売組織コマンド・ヴェルメーリョであることから、リオ州に逃れ込む可能性もあると見た同州の治安関係者は、脱獄犯達が州内に入るのを阻止するための監視活動などを強化しているという。