エスタード紙=社主不明の企業が工事?!=脱獄事件の連邦刑務所で

【既報関連】国内では最厳重警備とされる連邦刑務所の一つのリオ・グランデ・ド・ノルテ州モソロー刑務所で14日未明、史上初の脱獄事件が発生。脱獄を容易にした原因の一つとされる刑務所内の改修工事の請負企業が、実際の所有者が分からない不正企業の可能性があると21日付エスタード紙(1)(2)が報じた。
モソロー刑務所からの脱獄者は、アクレ州出身でリオ州に本拠がある犯罪組織のコマンド・ヴェルメーリョ(CV)構成員2人だ。二人は特別指導のための独房にいたが、房内の壁などから取り出した鉄骨を使って壁面にある照明用の穴の枠や蓋を外すと、電気配線や配水管などのあるシャフトを経て建物の屋根裏に至り、屋外に出た。その後は、中庭にあった警備壁建設作業場に放置されていた大型ペンチを入手し、フェンスを切って脱獄したという。
犯人達は22日現在も捕まっておらず、300人だった捜索隊は500人に増えた後、国家治安部隊員100人も増員された(19日付アジェンシア・ブラジル(3)参照)。また、刑務所から半径15キロの農村部に絞られていた捜索範囲も次第に拡大。21日付フォーリャ紙サイト(4)によると、セアラー州の一部でも、二人の顔写真を載せ、目撃情報を寄せるよう求めるポスターが出回り始めた。
誰かが脱獄を支援した可能性も捜査中で、所内の改修工事も脱走を容易にした要因の一つとされているが、工事担当者が真の所有者さえわからぬ不正企業だと指摘したのがエスタード紙の記事だ。
それによると、工事担当者のR7ファシリティズは年商1・95億レアル。書類上の所有者は連邦直轄区郊外の簡素な家に住み、コロナ禍の緊急支援金受給者だったジルデニルソン・ブラス・トレス氏(47)だ。同氏は17~20年の税金滞納で8338・10レの負債があり、22年に資産を差し押さえられた時の口座残高は523・64レだった。
また、同氏がヌクレオ・バンデイランテス地区にあるという会計事務所の住所には、「メガ・バタタス」という看板があるだけで、R7の名前は出てこない。
同氏がR7の共同経営者になったのは23年2月で、3月にはブラジリアの刑務所の工事契約に、4月にはモソロー刑務所でのサービスの追加条項にも署名している。モソロー刑務所の改修契約はボルソナロ政権時の22年4月にアンデルソン・トレス法相(当時)が締結。更新はフラヴィオ・ジノ法相下の23年4月だが、契約そのものは法務省の担当部署が扱っており、法相らは直接は関与していないという。
同社によると、モソロー刑務所の改修工事は170万レ。2023年の場合、連邦議会内の工事など、官民合わせ、3・53億レの契約を履行中だという。
R7と連邦政府との契約は16年からで、当時の経営者は21年1月にウエズレイ・フェルナンデス・カミロ氏に会社を売却。23年2月からはジルデニルソン氏が代表となっている。ウエズレイ氏は現在、私立病院の民間消防士を務めており、名前だけ貸した偽りの経営者との声を否定している。
21日付G1サイトなど(5)(6)によると、レワンドウスキー法相は連邦刑務所全体での毎日の独房捜索や照明構造の強化と共に、同件についての厳密な調査も命じたが、専門家達は最厳重警備の連邦刑務所の工事が真の所有者もわからぬ企業が請け負っていたことが脱走を容易にした可能性があると問題視している。