ルーラが紛争両国大統領と会談=ベネズエラとガイアナ 「南米に戦争は不要」

【既報関連】2月29日午前中、ルーラ大統領はガイアナで同国のイルファン・アリ大統領と会談。エセキボ地区を巡るガイアナとベネズエラの間の領土問題に関し、「南米に戦争は不要」「南米が平和地帯であり続けられるよう働く」と宣言した。ルーラ大統領は3月1日、ベネズエラのマドゥーロ大統領とも会談を行った。同日付G1サイト(1)などが報じている。
ルーラ、アリ両大統領は2月29日の朝、ガイアナの首都ジョージタウンで会談を行い、会談後には両者揃って声明を発表した。
ルーラ大統領はそこで、「ガイアナとの結束は、その開発をを助けるのみならず、南米を地球上の平和地帯として維持するための伯国の戦略の一部」とした後、「戦争は不要だ。戦争はインフラや人生を破壊し、苦しみをもたらす。平和は人類に繁栄や教育、雇用の創出、平穏をもたらす」と語った。
ルーラ氏はさらに、「世界中の人たちがブラジルはウクライナに対する戦争に反対し、ガザで起こっていることにも反対であることを知っている。ハマスのテロ行為に対してもだ。世界中の人たちがブラジルがどこの国とも争いを起こしたくないことを知っているのだ」と強調した。
ガイアナとベネズエラは現在、ガイアナ国内のエセキボ地区の領土権を巡って争っている。争いの起源そのものは19世紀に遡るが、ガイアナがまだイギリス領だった時代、さらに1966年の独立の際にも、国際的にガイアナの領土と認められてきた。
だが、昨年の12月にマドゥーロ大統領がベネズエラでエセキボ地区についての国民投票を実施。同国政府によると、「95%の国民がベネズエラ領にするべきと考えている」という結果が出たという。この国民投票はハーグ国際裁判所が反対する中で強行したものだった。エセキボ地区はガイアナの国土の約7割を占めている上、2015年に同地区の沖合で数10億バレルの海底油田が見つかったことで世界的な話題となっていた。
この国民投票が終わった翌週、ブラジルからセルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問が仲裁役の一人となってマドゥーロ、アリ両大統領の会談を行い、武力行使をしないこと、次回の会談をブラジルで行うことなどを約束。閣僚会談は既に終えたが、事態は進展していない。
だが、ルーラ氏はガイアナでの声明をマドゥーロ大統領の名前に言及することなく終わっている。
今回のルーラ大統領のガイアナ行きの目的はこれだけではない、前日の2月28日にはカリブ共同体(Caricom)の第46回首脳会談に参加。3月1日にはカリブの島国セントヴィンセント・グレナディーンの首都キングスタウンで行われたラテン・アメリカ・カリブ共同体(Celac)の会議にも参加した。
今回のルーラ大統領の行動の背景には、2016年のジウマ大統領罷免後、状況が一変していた南米、カリブ海諸国との関係を回復させ、ブラジルの発言力を強めたいという目的があった。
Celacの会議の後、ルーラ大統領はマドゥーロ大統領との会談の席に着いた。会談の焦点は、エセキボ問題に加えて、ベネズエラで今年開催される予定だが、日時さえ決まっていない大統領選などについてだ。同国ではマドゥーロ氏の対抗馬とされる野党候補の参加を否定する最高裁判決が出たりしており、公正な選挙の実施を同国への制裁解除の条件としている米国の出方が注目されている。