サンパウロ州海岸部=軍警作戦で今年57人死亡=「処刑」疑惑、知事全否定

【既報関連】2月2日にサントス市で軍警トビアス・デ・アギアル巡回機動隊(Rota)のサムエル・ウエズレイ・コスモ氏が殺害されたことで始まった軍警のヴェロン作戦による死者は、14日も2人増え、12日現在の計43人が、計45人になったと14日付G1サイトなど(1)(2)が報じた。
ヴェロン作戦は2月に始まったが、サンパウロ州海岸部では昨年導入されたエスクード作戦による死者も続けて出ていたため、1~2月の同地区での軍警による死者は57人に達した。4日付アジェンシア・ブラジル(3)によると、1~2月の軍警による死者は州全体でも増えており、昨年同期比で129%増の112人だった。
エスクード、ヴェロンの両作戦での死者増で、サンパウロ州海岸部はサンパウロ大都市圏以上に軍警による死者が出ており、市民や司法当局から職権乱用、犯罪行為に無関係の人物も粛清されたなどの声も出ている。
両作戦での軍警による活動に対する疑問は州議会治安委員会でも問題視され、6日に公聴会が開かれたが、6日付G1サイト(4)によると、ギリェルメ・デリテ州保安局長は、軍警や市警の監察局は告発があれば完全な透明性を保ちつつ調査するはずだが、両作戦では軍警による行き過ぎた行動は確認されていないと明言した。
ただし、14日付G1サイト(5)によると、麻薬密売で過去に10年間服役した、松葉杖がないと歩けない男性が軍警と銃撃戦を行い、死亡したと報告された件で、同男性の妻は、「松葉杖で体を支えるのが精いっぱいなのに銃をかまえたり動き回れるはずがない」と証言しており、現実と矛盾する報告もあるようだ。
また、6日付G1サイト(6)は、軍警達は即死者を怪我人として医療機関に送ることで、鑑識官の現場検証を逃れ、事実関係の判明を妨げていたという医療関係者の証言を掲載。同サイトが入手した17人の死亡例に触れた報告書10件は全て、死者は犯罪者で武器を持っていたために射殺されたと説明。内12人は救出後に救急治療室に搬送されたが、死亡とされていたという。
7日付G1サイト(7)によると、検察は即座に捜査を開始したが、ブラジル治安フォーラムや検察官によると、遺体の撤去が事実なら、手続き上の詐欺罪に該当し、3カ月~2年の懲役と罰金が科されるという。
州政府は保安局を海岸部に移すなど、両作戦を積極的に支援しており、種々の疑惑や告発についても、州政府や当該機関にはそのような声は届いていないとして、人権団体などからの告発にも「我関せず」の姿勢を保っている。
より顕著だったのは、国連人権委員会で、サンパウロ州海岸部では史上最も致死的な作戦が進行中で、州知事が推進していると告発された時だ。8日付G1サイトなど(8)(9)によると、タルシジオ知事は、不正についての報告は受けておらず、「我が州の警察は非常にプロフェッショナルで、我々は正しいことをしている」とし、「国連でもジャスティスリーグ(米国コミックスに登場する架空のスーパーヒーローチーム)でも好きなところに行けばいい。何があっても構わない」と語った。ただし、不正疑惑については調査するとも述べている。