連邦警察=前大統領ワクチン疑惑で送致=最高裁が起訴受理なら被告に=「偏った政治的迫害」と反論

連邦警察は18日、ボルソナロ前大統領と元側近で陸軍中尉のマウロ・シジ容疑者ほか15人を、コロナワクチン接種記録の改ざん嫌疑の証拠が充分に集まったとして検察庁に立件した。連邦警察が検察庁に立件したことを受け、今後、検察長官が最高裁に起訴するかどうか判断する。19日付G1サイト(1)(2)やUOLサイト(3)が報じている。
今回の送致は、2022年12月に、渡米の準備を行っていたボルソナロ氏が、米国への渡航で必須とされているコロナワクチンの接種を行っていなかったにもかかわらず、行ったとの偽造記録を作っていた嫌疑に対するものだ。この件ではボルソナロ氏と娘のラウラさん、シジ氏と彼の妻と3人の娘、並びにボルソナロ氏の任期後も警備役に命じられていた軍人2人の接種記録が改ざんされていた。
この件は2023年5月、シジ容疑者が逮捕されたことによって明らかになった。この件での逮捕は6人に及んでいる。シジ氏はこの逮捕後、三権中枢施設襲撃事件などについても証言を始めた。
今回、連警が送致したのは、ボルソナロ氏やシジ氏その他の大統領側近、シジ氏の妻のほか、関与が疑われる軍関係者や偽造証明書を発行したリオ州ドゥケ・デ・カシアス市の保健局関係者など、17人に及んでいる。
シジ氏はこの件の捜査であるヴェニレ作戦に関する事情聴取の中で、「ボルソナロ氏に頼まれて同氏とラウラさんのワクチン接種記録の改ざんを行った」との供述を行っている。
シジ氏によると、改ざんの手口は、元陸軍少佐のアイルトン・バロス氏に渡した改ざん依頼が、ドゥケ・デ・カシアス市保健局長だったジョアン・カルロス・デ・ソウザ・ブレッシャ氏に渡り、ブレッシャ氏が自分の暗証番号を使って保健省の全国免疫プログラムの情報システム(SI―PNI)に偽情報を流し込んでいたという。アイルトン、ブレッシャ両氏も既に逮捕されている。
これに加え、連警は、大統領官邸にある印刷機の使用記録の中にボルソナロ氏とラウラさんのワクチン改ざん記録があることも確認している。これは22年12月22日にシジ氏自身が使ったことを認めており、記録の名義は「コロナワクチン証明書」となっている。また、シジ容疑者は、これを印刷してボルソナロ氏に手渡したとも証言している。
なお、ワクチン接種の偽情報がドゥケ・デ・カシアスで登録されたのは12月22日で、同月27日には記録が消されていた。
今回の報道を受け、ボルソナロ氏の広報のファビオ・ワインガルテン氏は「これは機密事項がマスコミに流れたものだ。嘆かわしいし馬鹿げている」と批判し、「メディア主導で偏ったもの」として批判。今回の起訴を「政治的迫害」と呼んでいる。
今回の送致を検察庁が受け入れ、最高裁に起訴し、最高裁が受理すれば、ボルソナロ氏は被告となる。G1サイト(4)によると、何人かの判事は「この1週間ほど前にクーデター案が受け入れられなかったことで、米国行きに切り替えたのでは」との見方を行っている。大統領選の結果を変える法案(ミヌタ)が陸軍、空軍の総司令官に受け入れられなかったのは22年12月14日のことだった。