イーロン・マスク=「モラエス判事は検閲」=辞任か罷免を求める=X巡り最高裁と対決

ことの発端は6日、マスク氏がX上の自身のアカウントでモラエス判事の批判を始めたことだった。マスク氏はモラエス判事が1月に行ったリカルド・レヴァンドウスキー氏の法相就任を祝う投稿に対し、「なぜ、あなたはブラジルでこのような極度の検閲行為を行うのか」と英語で書き込み、これが話題を呼んだ。
モラエス判事は最高裁で「ネット犯罪捜査」、「1月8日襲撃事件捜査」などを担当しており、現時点では企業家のルシアノ・ハン氏、米国に逃亡中のジャーナリストのアラン・ドス・サントス氏、元下議で現在服役中のダニエル・シルヴェイラ氏、ユーチューバーのモナルキ氏、ブロガーのオズワルド・エスタキオ氏のアカウントが凍結されている。
最初の投稿から数時間後、マスク氏は「我々は処分を解除する。あの判事は(命令に従わない場合、)我が社の社員を逮捕し、ブラジルでのXの回線も切ろうとしている」「結果として、我々はブラジルからの収益を失い、ブラジル支社を閉鎖せねばならなくなるだろう。だが、主義や原則の方が儲けより大事だ」と投稿した。
同氏は7日にも、「Xは近日中にモラエス判事からの命令を掲載し、それがいかにブラジル憲法を犯しているかを見せるつもりだ。この判事は立て続けも憲法違反を犯している。彼は辞任するか罷免すべきだ」との投稿を行い、裁判所が閉鎖したアカウントを再開すると脅した。
これらの声明に、ブラジルの保守派政治家らは強く賛同した。ネット上ではアドリアナ・ヴェントゥラ下議やマルセロ・ヴァン・ハッテン下議(共にノーヴォ)などが中心となり、「検閲ノー。ブラジルに声を」というキャンペーンを展開中だ。
ボルソナロ前大統領も、「マスク氏はブラジルの自由のために戦ってくれている」「心強い援助を得た」として、同氏を称賛した。
他方、連邦総弁護庁(AGU)のジョルジェ・メシアス長官や連邦会計検査院(TCU)のブルーノ・ダンタス長官らは、「他国の人がブラジルの最高裁を攻撃するのは問題」とし、このような行為に対する法規制を求める声明を出している。
マスク氏による一連の言動後、国家電気通信庁(Anatel)は、通信オペレーターたちに対してXのブラジルでの運営差し止めを命じる可能性を示唆する声明を発表した。
また、モラエス判事がその後、マスク氏をネット犯罪捜査の捜査対象に含めると発表した。同判事はその理由を、マスク氏の行為は「フェイクニュースと反民主主義的行為を肯定するもの」であり、捜査妨害にもあたるものだと説明した。また、同捜査で既に命じられているアカウントの凍結に応じない場合、X側に1アカウントにつき、10万レアル/日の罰金を課すとした。
8日にはバローゾ最高裁長官も、「ブラジルで営業している企業は憲法の適用を受ける」と述べた。
だが、今回の措置については、一部の司法関係者からも疑問や批判が出ているようだ。CBNブラジル8日午前8時9分に今件に関する取材を受けたUSP公共政策専門家のパブロ・オルテラド氏は、「この議論には両側に不透明な部分がある。2023年1月の3権施設襲撃事件の関係で閉鎖されたXアカウントが10なにか、500なのか公表されておらず、その根拠も分からない。中には、将来的に不当な主張をする可能性があるから閉鎖されたアカウントまであると言われており、学術界を巻き込んだ透明な議論が行われるべき」と主張した。
マスク氏の主張により「言論の自由」に関して、ブラジルは米国よりも厳しい実態があることが浮き彫りになってきている。