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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=121

2024年4月11日

「……」
「人生、人に嫌われながら世に憚るより、惜しまれつつ逝くのも花ではないか。君も今後は誰にも気兼ねせず、自由に生きることだな。これまで、縛られすぎてはいなかったか」
「……」
「まあ、おじさん、しばらく。お元気?」
 和子が卵焼きを皿に並べて持ってきた。母親似で、父親の私とは心の中で反発し合っていても、お客には愛想がいい。
「いつもの通りさ。和ちゃんはどうだい。もう、すっかりいい娘さんだな。あれは十年も前かな。訪ねてきた俺の膝に腰掛けて、何とかで何とかモーチャンよ、と沖縄の民謡を歌ったりしてさ。俺がシャムの歌を聞かせると、次にきた時、ちゃんと覚えてい...

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