ルーラ=ペトロブラス総裁を解任=政府介入恐れて株価下落=ジウマ時代の原油庁長官に

ルーラ大統領(労働者党・PT)は14日、ペトロブラスのジャン・ポール・プラテス総裁を解任した。連邦政府は特別配当の支払い問題などでかねてからプラテス氏に不信感を抱いていた。後任にはマギダ・シャンブリアール氏が就任する。同日付G1サイト(1)が報じている。
3年余りで5人の同公社総裁が大統領との意見の相違から解任され、6人目の就任となった。15日付グローボ紙サイトは、エロス・アイタ・コンスルトリア社調査によると、ペトロブラスの普通株(PETR3)は15日終値で6・78%下落、優先株(PETR4)は6・04%下落し、合計で340億レアルの市場価値の損失となったと報じた。14日付グローボ紙サイト(2)ではアティバ・インベストティメントのアナリスト、イラン・アーベットマン氏に取材し、「この動き(解任)は公社へのより直接的な政府介入のリスクを大幅に高めるため、株価はネガティブに反応する傾向がある」との分析を紹介していた。
プラテス氏解任の一報はグローボ局のジャーナリスト、マル・ガスパル氏のコラムで明らかになった。プラテス氏は取材に対し、「解任は大統領の一存だ」と語った。プラテス氏によると、解任は大統領との会合の中で直接告げられた。会合にはアレッシャンドレ・シルヴェイラ鉱山動力相、ルイ・コスタ官房長官も同席していたという。
プラテス氏は解任を告げられた際、「自分は連邦政府と同じ方向を向いており、求められる結果や任期はまだ先だと思っていた」と悔やんだ。大統領らは、プラテス氏が政府が望んでいた通りの業績を残せていないことを解任の理由としているが、プラテス氏自身は、解任は「連邦政府の閣僚たちとの不和によるもの」と見ている。
プラテス氏はルーラ氏が大統領に再就任する直前の2022年12月にペトロブラス総裁に就任。その際、ルーラ氏は「弁護士とエコノミストの経験のあるエネルギー分野の専門家が総裁になる」とネットで喜びを語っていた。
プラテス氏はPTとも関係が深く、2014年の上議選ではファッチマ・ベゼーラ氏の補欠となり、同氏が2019年にリオ・グランデ・ド・ノルテ州知事になったことで上議に昇格。2022年まで任期を務めていた。
しかし、その良好な関係が今年の3月7日(3)に変わった。ペトロブラスは同日、2023年の収益が前年比で33・8%減の1246億レアルだったと発表された。ただ、この業績以上に市場を困惑させたのは、ペトロブラスがこの業績結果を受け、特別配当の支払いを止めると発表したことだ。
特別配当の支払い停止は連邦政府の意向だったが、プラテス氏は特別配当の半分を支払うよう主張していた。だが、ペトロブラスの経営審議会で、連邦政府側のメンバーと政府外のメンバー1人が特別配当の支払い停止に賛成したため、プラテス氏が投票を放棄。これがシルヴェイラ鉱山動力相との関係悪化の引き金となり、この頃からプラテス氏解任の噂が立っていた。
この決定はペトロブラス株の大幅下落を招き、その後の経営審議会で特別配当の半分を払うことを決めると、株主総会もそれを承認した。
プラテス氏自身はフェルナンド・ハダジ財相から支持を受けたりして解任を免れて株主総会に望んでおり、経営審議会のメンバーにも再選されたが、13日にペトロブラスの24年第1四半期の純利益(4)は前年同期比で約38%、前期比でも約23%減の237億レアルと発表した翌日に解任された。
プラテス氏の後任にはマギダ・シャンブリアール氏が就任する。同氏は1980年にペトロブラスでのキャリアを開始し、2002年に国家原油庁(ANP)に入った。2008年に同庁局長、ジウマ政権時の2012年には同庁長官に就任し、ジウマ政権が崩壊した2016年まで長官職を務めた。同氏は同庁在任中、プレサル発見後に5年間停止されていた石油採掘、開発での入札を再開し、活発化させたことでも知られている(5)。