ルーラ=中銀総裁真っ向から批判=自らの再出馬ほのめかす=専門家らは独立性を擁護

ルーラ大統領(労働者党・PT)は18日、中央銀行のロベルト・カンポス・ネット総裁に関して、「一方の政治の側に立ち、国に害を与えている」と発言し、波紋を広げている。大統領はさらに、大統領選への再出馬もほのめかしている。同日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
ルーラ大統領の発言は、18日朝、CBNラジオのインタビューで飛び出したものだった。この取材でルーラ氏は、「中銀総裁は独立性の能力を示しておらず、自分で政治的な意向を示している。本来の彼の役目は、国を助けることなのに、国に害を及ぼすことの方がはるかに多い」と苛立ちを隠さなかった。
この発言は、翌19日に控えている通貨政策委員会(Copom)を意識したものだ。今回は経済基本金利(Selic)が10・50%のまま変わらない可能性が取り沙汰されており、他の国に比べ、極めて高い金利となる。大統領は就任当時から、Selicがなかなか下がらないことに不満を示していた。
ルーラ大統領の苛立ちは、カンポス・ネット氏が出席した夕食会でタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)と会ったことで一段と高まっている。「フェスタで偶然会ったわけじゃない。あれはカンポス・ネット氏のために催されたものなのだから」と大統領は不満げに話した。
そのイベントは、サンパウロ州議会が「栄誉ある人物」と認めた人物に立法功労勲章を捧げるもので、ボルソナロ派のトメー・アブドゥッチ副議長(RP)が提案したものだった。カンポス・ネット氏はボルソナロ政権時に中銀総裁に就任しており、イベントにも家族連れで参加した。
ルーラ氏は「カンポス・ネット氏は私よりタルシジオ氏のいうことを聞くようだ」と語り、「セルジオ・モロ氏のように、彼も政治的判断を行った後に役職を得るのかな」と、判事時代に自身に有罪判決を下して2018年の大統領選への出馬を断念させ、その後にボルソナロ政権の法相に就任したモロ氏を例に挙げ、皮肉った。
これは、夕食会の後に「カンポス・ネット氏が2026年の大統領選時にタルシジオ氏の財相予定者になることを承諾したようだ」との報道が行われたことが背景にある(2)。タルシジオ氏は26年の大統領選への出馬を否定しているが、かねてから、ボルソナロ前大統領の後継者と見られている。
ルーラ氏はさらに、「この国を否定論者の手に再び渡さないためにも、私が2026年にまた出馬しなければならないかもしれない」と再選への意欲をほのめかした(3)。
一連の大統領発言に対し、カンポス・ネット氏は何も発言していない。
19日付グローボ紙で、ジェツリオ・バルガス財団のロブソン・ゴンサルベス教授は「カンポス総裁には中央銀行の自律性がないと発言したルーラ大統領の口調は間違っていた」と批判した上で、「Selic金利が年10・5%、インフレ率が約4%なので実質金利が6% 強にもなるのは確かだ。だが問題は、ジルマ政権以来、財政バランスの拠り所がなくなってしまったことだ。財政アンカーのない国では、実質金利が高くなるのは予想される範囲だ」と述べた。
かつて、ルーラ政権で中銀総裁を務めたエンリケ・メイレレス氏も、「中銀の独立性は不可欠で、それがあってこそ経済の予測も立ち、インフレも抑制できるのだ」との発言を行っている。