年金収支の不均衡が拡大=歳入は歳出の73%のみ

21日付ヴァロール紙(1)によると、ブラジルでの社会保障費の歳入と歳出の不均衡は年々拡大しており、2023年の歳入でカバーできたのは歳出の73・7%に過ぎなかった。特に、年金などの歳出は増加傾向にあり、2019年に社会保障制度改革が行われたにも関わらず、さらに高い徴収率が求められる状況が続いている。2008年は歳入が歳出の111・8%をカバーしていたが、状況はこの15年間で大幅に悪化しており、収支不均衡はさらに拡大する見通しだという。
この前例のない研究は、応用経済研究所(Ipea)のロジェリオ・ナガミネ氏とグラジエラ・アンシリエロ氏によるものだ。昨年の社会保障費は、歳出が約1兆6千億レ、歳入が1兆1790億レで、4290億レの赤字だった。つまり、歳入は歳出の73・7%しかカバーしていない。同研究によれば、歳入の増加が緩やかである一方、歳出、特に年金の増加は続くと予想されるため、赤字額は長期的に拡大する見通しとなっている。
2000年の場合は、国立社会保障院(INSS)を通じて徴収された民間労働者を対象とする一般社会保障制度(RGPS)の歳入が、総支出の84・7%をカバーしていた。歳入不足は既に起きていたが、状況は年々悪化。昨年のRGPSの収入は支出の65・9%をカバーするに止まり、わずか20年余りで約20ポイントも減少した。
2013年の国内総生産(GDP)に占めるRGPSの歳入の割合は09年と同水準の5・5%と推定されていたが、歳出は同期間中にGDPの6・7%から8・3%へと1・6ポイント増加した。
この状況を説明する要因は複数あり、保険料免除の増加、長期にわたる改革の欠如などの他、ほとんど、あるいは全く保険料を負担しないにも関わらず、年金給付や福祉給付を受ける人の増加も挙げられている。これには、個人零細企業家(MEI)、農村部の年金受給者、継続的な社会援助給付金(BPC)の受給者などが含まれる。
Ipeaが行った様々な状況における研究によると、RGPSの均衡を保つために必要な徴収率は引き上げられる可能性が高い。行政記録のデータと被保険者の給与を考慮して試算すると、2009〜22年の間にRGPSを完全に賄うために必要な平均率は35・7%となる。
全国家庭サンプル調査(Pnad)継続版に基づくと、22年に必要だった年金積立税率は30・4%で、BPCを含めると、均衡税率は32・2%である必要があったという。
研究者はまた、非正規部門からの拠出を含めると仮定した場合も、年金とBPCの資金調達のための積立税率は25・6%になると試算している。現在の労働者からのRGPSの徴収率は7・5~14%で、給与に段階的に課税される。
同調査の結果は、政府の経済チームが年金制度の赤字抑制のため、財源強化と不正撲滅を提唱している時期に発表された。だが、政府の複数のメンバーはすでに新しい改革を否定しており、2019年の憲法改正で残された課題は未解決のままだ。ナガミネ氏とアンシリエロ氏は本調査の中で、2019年の改革におけるRGPSの財源に関する変更は、赤字解消には不十分だと警告している。
サンパウロ総合大学(USP)経済・行政学部のルイス・エドゥアルド・アフォンソ准教授は、Ipeaの調査は歳入と歳出の比率がいかに悪化しているかを示しているとし、「世代間扶養制度(現役世代が納める保険料によってその時点での高齢者への年金給付を賄うという仕組み)では、歳入と歳出が等しくなることが期待されていた。しかし、実際には何年間もそのような状況にはならず、状況は悪化の一途を辿っている」と指摘した。
同氏は、財政の問題を解決する唯一の道は歳入と歳出を見直すことだと評価しており、特にMEIのような特別拠出金制度の見直しを提唱している。これはIpeaの研究でも指摘されている。「MEIは成果を上げていない公共政策であり、適切でない労働者を引き寄せ、年金の赤字を増大させた」と指摘した。
旧企画省の元局長で資産運用会社ポロ・カピタルの渉外担当理事、エコノミストのアルナルド・リマ氏は、時間の経過と共に必要経費はさらに増えるため、将来的に公的な年金制度が支払うことができる額は社会保障の最低額のみになる可能性があると見ている。