パンタナル=半年で70万ha超焼失=7月も3日で半月分失う

【既報関連】世界一の湿地帯パンタナルは異常乾燥に苦しんでいる上、人為的に起こされた火災により、統計史上最悪とされていた2020年以上の勢いで植生を焼失している。
パンタナルの現状は深刻で、6月11日現在で1998年の統計開始以降最悪だった20年同期を54%上回る372ヘクタール(ha)を焼失したと6月17日付クリマ・インフォ(1)が報じていた。

だが、国や軍、国家治安部隊の支援も得て行っている消火活動にも関わらず、火災は拡大。2日付アジェンシア・ブラジル(2)では、上半期の数字は26年間で最悪で、3538件の火災で70万haを焼失と報じられた。特に、6月は全体の70%以上の2600件の火災が起き、41万haを焼失したという。パンタナルでは年内は焼き畑などが禁じられており、違反者は逮捕され、罰金や資産差し押さえなどの対象となる。
特に深刻なのはマット・グロッソ(MS)州コルンバーで、パンタナルでの火災の70%は同市で起きている。
また、5~6月は落雷などによる火災はなく、全てが人為的な火災だ。85%は私有地で起きており、連警が12人の農園主、18件の火災を捜査している(3日付G1サイト(3)参照)。
火災加速は明らかで、6月27日付カンポ・グランデ・ニュース(4)によると、6月25日現在の焼失面積は53万haだったが、5日間で17万ha増えている。4日付MetSul(5)によると、6月の火災件数2639件は1998~2023年6月の平均の18倍で、2005年6月の435件の6倍だ。77件だった昨年同月比なら34倍となっている。
この傾向は7月も変わらず、1~3日は224件の火災が起き、1998~2023年の7月の平均の441件の半分を超えた。この件数は昨年7月の月間件数の倍だという。
2日付エスタード紙(6)は、火災急増の背景には過去40年間で最悪の干ばつがあると報道。パラグアイ川の水位は場所により期待値を3メートル以上下回っていることや、国家水資源庁(ANA)が5月、パンタナルで深刻な水不足が発生と史上初の宣言を行ったことと共に、例年は8~9月に始まる水位低下が6月に起き、水不足は長引くとの見解も報じた。
火災増加は法定アマゾンでも同様で、上半期の火災は1万3489件で過去20年間で最多、昨年同期比では61%増と報じられた。今年上半期の件数は、2004年の1万7340件、03年の1万7143件に次ぐ3番目の多さだ。他方、6月23日までの法定アマゾンの森林伐採面積1525平方キロは、2649平方キロだった昨年比で42%減だ。
5日付アジェンシア・ブラジル(7)によると、ブラジルの植生は火災により、5年間で9%劣化したという。1986~2021年は80万ha(6・8%)から210万ha(約19%)が荒廃したとされ、火災に敏感な地域があることを示しているという。
1日付G1サイト(8)は、今年のパンタナルは雨不足の上に火災が重なっており、回復不能な地域も出て来るとの警告も報じている。