ベネズエラ=大統領選で双方が勝利主張=マドゥーロ当選宣言で波紋=南米諸国疑問視、ルーラ沈黙

28日、ベネズエラで大統領選が行われ、中央選挙委員会(CNE)はニコラス・マドゥーロ氏の勝利を宣言した。だが、国際的に約束されていたはずの公正な選挙とはならず、欧米はもちろん南米諸国からも開票結果が疑問視されている。29日付コレイオ・ブラジリエンセ(1)などが報じている。
今回のベネズエラでの大統領選は、前回2018年の大統領選が野党側がボイコットしたまま行われたりしたため、大統領選後に米国が同国に厳しい経済制裁を科し、伯国を含めマドゥーロ氏を大統領として認めない国が相次いだ。そのため、2019年にノルウェーがベネズエラの与党と野党の間の仲裁に入り、次回の選挙で公正な選挙を行うことが国際的に約束されていた。
だが、今回の選挙でも、最大野党側の候補が次々に失格となった上、選挙キャンペーンが始まってからも、マドゥーロ氏が「自分が落選したらこの国は血の海と化す」と威嚇するなど、公正とは言い難い状況が続いた。
加えて、当初、選挙を監査はずだったEUがベネズエラ側に断られ、1週間前に監査員派遣を発表したブラジルの選挙高裁も、マドゥーロ氏の「票なぞ数えたことがない」との侮辱発言後に派遣を取りやめる、投票日直前の国境封鎖でラ米地区からの選挙監視団が入国できないなど、波乱が続いていた。
28日の投票は現地時間の午前6時20分(ブラジリア時間7時20分)から始まり、18時に終わった。投票中は妨害行為などの報道は特に行われず、ブラジル連邦政府を代表して視察のために同国を訪れていたセルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問も賞賛を送った。また、対抗馬のエジムンド・ゴンザレス氏も投票後に、「軍も選挙結果を尊重するものだと信じている」と語っていた。
しかし、開票作業は現地時間の22時を過ぎても始まらなかった。そして、現地時間で29日を過ぎた頃、CNEが何の開票速報もないままに突然、マドゥーロ氏が当選したと発表した。CNEによると、開票率80%の時点で、マドゥーロ氏が51・21%、エジムンド氏が44・2%とのことだったが、CNEのサイトはハッカーの攻撃を受けたとして機能を停止しており。開票結果も含めた一切の情報が伏せられたままだ。
CNEの発表後、マドゥーロ氏は自ら勝利宣言を行い、「この国ではボリビアで2019年に行われたファシズム的な行為は認められない」として、国民が自分を選挙で選んだことをアピール。野党側の不満を封じ込めようとした。
だが、野党側は納得していない。本来出馬する予定で失格となり、選挙期間中はエジムンド氏に協力して動いていたコリーナ・マチャド氏は、「我々が70%は獲得しているはずだ」とし、結果に疑問を抱いている。
この発言の背景には、事前の世論調査の大半でエジムンド氏が6割方の票を獲得して勝利との予想が出ていたことや、メガナリシス社による出口調査でも、65%がエジムンド氏に投票していたという結果が出ていたことがある。(2)
開票結果を認めていないのは世界各国の首脳も同様で、マドゥーロ氏とは政治信条が逆の超リベラル派のアルゼンチンのミレイ大統領はもちろん、同じ急進左派のはずのチリのボリッチ大統領までが「亡命中の数百万人を含むベネズエラ国民は、完全な透明性を求めている」、中道右派のウルグアイのラカジェポー大統領も「選挙日までの運営と集計に不正があったのは明らかだ」と結果を認めないとの声明を出した。
ブラジルは他国の反応が出終わった後に外務省が声明を出したが、米国同様、詳細な選挙結果を求めるだけに終わった。前任者のチャベス前大統領と親しく、マドゥーロ氏を擁護する姿勢が目立つルーラ大統領は今のところ声明を出していない。(3)