モラエス最高裁判事=いつX停止を実行か?=賛否両論が巻き起こる=衛星通信口座凍結で波紋

モラエス判事の勧告は28日の20時過ぎに最高裁のXのアカウントから行われており、ブラジル事務所の代表選出は24時間以内に、と命じられていた。
だが、マスク氏はこの投稿に対して、「逮捕されるのはそっちだ」という挑発的な返答を行い、別の投稿でもモラエス氏のことを「スター・ウォーズ」のダースベーダーや「ハリー・ポッター」のヴォルデモートなど、映画上の有名な悪の支配者に例えてからかいもした。
そして、29日20時14分、X側は声明を発表。そこで「政治的に反する勢力を検閲し、処罰するという違法な命令に従わなかっただけだ。ブラジルでの停止を待つ」とした。この数時間前にモラエス判事は、マスク氏がブラジルで展開する衛星事業「スターリンク」のブラジル関係の口座を凍結していた。
この時、複数のテレビ・メディアが生放送でこの状況を追い、「モラエス判事はXの停止を行うべく、国家電気通信庁(Anatel)に手続きをとるだろう」と報じた。
だが、Anatelへの命令は守秘事項となっているため、実際にいつどのように命令が行われるかは明らかにされないことになっている。また、仮にAnatelにXの停止申請が行われた場合でも、Oi、Vivo、Claroなどの通信大手にその旨を依頼する必要があり、これらの会社の了承を得た末での停止となる。30日18時30分現在、Xの停止は起こっていない。
今回のモラエス判事の判断に対しては司法界からの疑問の声も少なくない。サンパウロ総合大学(USP)のルーベンス・ベサック教授は、「問題のない利用者まで巻き添えで利用ができなくなるのは問題だ」とし、ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)教授で弁護士のルイス・アウグスト・ドゥルソ氏は、「前代未聞だが、違法ではない。ただ利用者のことを考えると残念だ」と語った。キリスト教大学サンパウロ市校のリカルド・サエグ教授は、「法人の財産的自治を扱っている民法49条に反し得る」との見解を述べている。(2)
また、キリスト教大学ミナス・ジェライス校のクロヴィス・ベルトリーニ教授はモラエス判事がスターリンクの口座を凍結させたことに関し、「民法上の司法の過程を定めた部分に抵触する」との見解を示し、命令が無効になり得ると語っている。(3)
他方、最高裁の同僚判事の多くは、マスク氏にはブラジルの最高裁を追い詰めたいという思いがあると見て、今回のモラエス判事の判断を支持している。また、Xの使用が止められるかもしれないはずの利用者の間でも、「ブラジルの規定は守るべき」とモラエス判事を支持し、マスク氏を批判する声も少なくない。ルーラ大統領も「マスク氏はブラジルの法律を守るべきだ」と語っている。(4)
カルタ・カピタル誌は、マスク氏が過去にポルトガルの極右政党の支持者のアカウントを同国の依頼に応じて削除した例を出し、行動の矛盾を指摘している。(5)