最高裁=小法廷でX停止満場一致=ユーザー連帯責任に疑問も=前大統領「北朝鮮にようこそ」

【既報関連】2日、最高裁第1小法廷でアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が下したSNSプラットフォーム「X(旧ツイッター)」の停止継続が満場一致で決まった。だが最高裁内では11人の判事全員での審理を求める声は多く、モラエス判事の判断はそれを避けたことになったと、2日付フォーリャ紙など(1)(2)(3)(4)(5)が報じている。
8月31日0時に始まったXの運用停止命令継続に関する審理は2日の午前中に行われたが、第1小法廷に在籍する判事からはモラエス判事が行った判断そのものに反対する人は出なかった。モラエス判事自身に加え、フラヴィオ・ジノ、クリスチアーノ・ザニン、カルメン・ルシア、ルイス・フクスの4判事が揃って賛成。これにより、Xの運用停止は続いたままとなった。
判事達が賛成したのは「反民主主義的な発言を行うアカウントの凍結」「違反アカウントの凍結を実行しないXに対する罰金」「Xの伯国事務所の代表選出」の3つを引き続き求めていくことで、5人の判事の意見が一致した。
今回の審理はモラエス判事自身の提案で行われた。その目的は、予てからボルソナロ前大統領支持派に多い反モラエス派の人たちから上がる「1人の判事が独裁的に全てを決めている」との批判を打ち消すことであろうと解釈されている。
だが、それでも今回の審理は疑問の残るものとなった。それは、最高裁内では全体審理を求めていた判事が多かったにもかかわらず、第1小法廷で一方的に審理を行ったためだ。
第1小法廷での審理でも手続き的には問題はない。だが、第2小法廷には、モラエス判事の判断に異議を唱えることが予想される、カシオ・ヌーネス・マルケス、アンドレ・メンドンサの両判事がいる。2人は共にボルソナロ前大統領の指名で最高裁判事となっており、これまでも前大統領寄りの判断を行っている。
また、これまでの報道によると、モラエス判事は停止命令を出す前に最高裁判事たちに意見を聞いたとされているが、その際、「1人の判事以外は賛同した」と報じられていた。
また、賛同したとはいえ、フクス判事の見解は全面賛成ではなかった。同判事は、「処罰対象となるべき人には処罰を継続すべき」としたが、「無関係の人に対してはその限りではない」とし、Xの利用者が連帯責任的に同社のサービスを利用できない状況に疑問を呈している。
ブラジル弁護士会(OAB)はこのフクス判事の見解を基に、VPNを使ってXにアクセスを試みる人に対して5万レアルの罰金を課すとするモラエス判事の命令の見直しを求めたいと考えている。
他方、Xの運営者イーロン・マスク氏は、モラエス判事のこれまでの司法命令は違法だと告発するためのアカウントをX内に作るなどして抵抗を続けている。マスク氏は9月7日の独立記念日にボルソナロ前大統領支持者らが行うデモでもこの情報を拡散し、モラエス判事の罷免を求める意向だ。
また、マスク氏が運営する衛星事業スターリンクを利用してインターネットにアクセスしている主に北部の人たちはまだXの利用が可能だが、国家電気通信庁(Anatel)はスターリンクの伯国での営業停止の可能性を示唆している。
8月30日付のBBCブラジル記事によれば、現在Xへのアクセスをブロックしている国は、中国、イラン、北朝鮮、ロシア、トルクメニスタン、ミャンマーなど独裁国家が多いという。31日付ポデル360サイト記事よれば、ボルソナロ前大統領は同日付のスレッドで「北朝鮮へようこそ」という皮肉を書き込んで話題を呼んでいる。