次期下院議長選=リラ氏の後任はモッタ氏か=PT、PL双方が支持表明=9月に入っての逆転劇で

アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)の後任人事を巡って、ルーラ大統領(労働者党・PT)とボルソナロ前大統領(自由党・PL)双方の支持を得る形となったウゴ・モッタ氏(共和者・RP)が有力となりつつある。だが、そこに至るまでには逆転劇があった。
下院議長選は連邦議会が再開する来年の2月の初めに行われるが、リラ議長はその前に本命を一本化させることを望んでいる。それは、次期下院議長選が全国市長選での駆け引きに使われることを嫌ったためだ。
当初はエルマール・ナシメント下議(ウニオン)、マルコス・ペレイラ下議(RP)、アントニオ・ブリット下議(社会民主党・PSD)の3人が候補とされ、リラ議長とも懇意で下院のセントロンのリーダーを務めているエルマール氏が有力と見られていた。また、リラ議長自身も推薦宣言を行うとの見方も出ていた。
だが、エルマール氏に対して難色を示したのがPTだった。それは、バイア州が以前、同州知事だったルイ・コスタ官房長官の膝元で、エルマール氏も同州の政治家であるためだ。エルマール氏は州都サルバドールの市長選でブルーノ・レイス氏(ウニオン)を推しており、PTが推すジェラルド・ジュニオル氏(民主運動・MDB)と対抗している状態にある。
他方、ブリット氏は同じくバイア州の政治家で、与党側の勢力ではあるが、ボルソナロ派への強い批判を展開しているため、議長選でセントロンや野党の支持を得られるかが疑問視されている。(1)
PTは、2016年に当時のエドゥアルド・クーニャ下院議長との対立からジウマ氏が大統領罷免に追い込まれたと見ており、下院議長選には神経質になっている。
一時はエルマール氏がルイ氏に歩み寄る姿勢を見せ、PT側もルーラ大統領がこの件では口出ししないことを決めていたため、エルマール氏で下院議長が決まりかかっていた。(2)
だが、3日にペレイラ氏が出馬断念を宣言。RP党首である同氏が同党のモッタ氏を候補にすると発表したことで、事態が大きく変わった。これにより、ボルソナロ派に対する懸念が解消されたためだ。
RPはタルシジオ・デ・フレイタス聖州知事を始め、ボルソナロ氏と懇意の政治家も少なくない保守寄り政党だが、ペレイラ氏自身がボルソナロ氏と個人的に対立しており、PLからの票獲得が疑問視されていた。
ペレイラ氏がモッタ氏を候補に立てたことは、PLにも好都合だった。それはモッタ氏がかねてから、二極化する下院の中で両者を取り持つことの出来る人物として出馬を望まれていたためだ。ペレイラ氏の宣言から間もなく、PLはモッタ氏擁立でゴーサインを出した。(3)
また、かねてから大臣候補を提供するなど、ルーラ政権に協力的なペレイラ氏は、PTのメンバーに、「モッタ氏は信頼できる人物で、連邦政府に敵対するようなことはない」との約束も行っている。PT党首のグレイシー・ホフマン下議も、同様の見解をルーラ大統領に伝えている。(4)
なお、エルマール、ブリット両氏は出馬断念に難色を示しているという。