米国不法滞在ブラジル人23万人=トランプ就任で不安広がる

【既報関連】米国大統領選挙でトランプ前大統領が再選を果たしたことで各種政策が変化する見込みだが、移民政策では同国に不法滞在中のブラジル人約23万人にも直接的な影響が及ぶ可能性があると11日付UOLサイトなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
7月発表のピュー・リサーチ・センターの調査によると、2022年現在の米国での不法滞在ブラジル人は前年比で3万人増の23万人いた。米国はブラジルからの移民が190万人おり、世界最多のブラジル人居住国だ。2番目に多いのはポルトガルで36万人が住んでいる。
専門家は、米国在住ブラジル人は、仕事や勉強など、取得ビザに沿って暮らし、有効なステータスを維持している限り、強制退去にあう心配はないという。また、米国人の間で人手が足りず、外国人就労者を希望しているような分野で働ける手に職を持つ移民は米国でも歓迎される。
Viva Americaという、米国向けブラジル人移民を専門で扱う会社のロドリゴ・コスタ経営最高責任者によると、米国でブラジル人の人手が最も必要とされているのは技術と情報、エンジニアリング、エネルギー、物流、保健衛生だという。また、トランプ氏は選挙中に米国に住む移民のことを批判したが、共和党大勝利で、求人数は増えると見られている。
また、トランプ氏は選挙中、就任初日に外国人学生に永住ビザ(グリーンカード)を与えることを約束。コスタ氏は卒業証書と同時に永住カード付与という発言実現の可否は不明としながらも、選挙中にこのような言及があったことを重要視している。
他方、観光ビザで入国して仕事をしている場合や不法入国者など、正規の書類を持たずに住んでいる人達は強制退去の対象となる危険にさらされている。これは、トランプ氏が繰り返し、不法移民の大量国外追放を訴えていたためだ。トランプ氏は「国境を強固で強力なものにするのに代償はない」とし、どんなに大きな犠牲を払ってでも公約を果たす意向を表明している。
ただ、約1300万人いる不法移民を年約100万人ずつ強制送還するには10年間で9800億米ドルかかるなど、数百万人規模の不法移民追放計画実施には障壁もある。専門家は実行の可能性と追放計画が米国経済に与える影響を疑問視しているという。
大量国外追放には最低1万人の職員や代理人の雇用、移民収容所の建設、追放と大量の訴訟を支援するための移民裁判所の柔軟性なども必要との声もある。
トランプ氏は11日に、第1期政権で移民関税執行局長官を務めた強硬派のトム・ホーマン氏を不法外国人の強制送還に関する責任者に指名したが、同氏は指名公表前、トランプ氏の計画の影響緩和に努め、軍が不法移民を捜索して逮捕するようなことはないと明言したという。
トランプ氏の支持者達は国外追放は米国労働者を益し、労働条件が改善するとしているが、不法滞在労働者は建設、農業、サービス業に集中しており、これらの産業の経済的不安性さや職場での労働者迫害などによる壊滅的な影響への警告も出ている。
移民最多州のカリフォルニアでは、移民からの税収が85億ドルに上り、州民の4分の1以上が外国生まれで、約半数の子供の親は移民だという。また、トランプ氏が約束した、米国で生まれた子供への自動的な市民権消滅やイスラム教徒が多数を占める国の国民の米国入国禁止措置の再発令も物議を醸している。