連警捜査=ルーラ暗殺計画の詳細判明=当選直後、軍人らの内乱か=ボルソナロも知っていた?

【既報関連】19日に、2022年の大統領選で当選を果たしたルーラ氏や副候補だったジェラルド・アルキミン氏、さらに、選挙高裁長官だったアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事らの暗殺計画を企てていた軍人4人と連警1人が逮捕されたが、連邦警察が発表した詳細な捜査内容はさらなる衝撃を与えている。今回の捜査は、ボルソナロ前大統領の元側近のマウロ・シジ被告が、三権中枢施設襲撃事件に関して行った司法取引の際の供述内容にはなかったが、同氏のコンピューターや携帯電話で削除されていた内容を復元した結果、新たに発見された記録を基に行われている。
連警によると、暗殺計画は2022年11月に始まり、大統領選でボルソナロ大統領(当時)の副候補だったヴァルテル・ブラガ・ネット氏のブラジリアの自宅で11月12日に行われた集会後に具体的な動きが始まったという。その集会には、19日に逮捕された少佐のラファエル・マルチンス・デ・オリヴェイラ容疑者、中佐のフェレイラ・リマ容疑者の他、シジ被告も出席していたという。
この日以降、シジ被告はオリヴェイラ容疑者と頻繁に連絡を取るようになり、秘密裏に行われる計画についての予算なども話し合うようになっていた。
22年12月6日には、当時、大統領府秘書室に所属していた暗殺計画疑惑の主犯マリオ・フェルナンデス容疑者が、大統領府で暗殺計画書「プニャル・ヴェルデ・アマレロ」を印刷しているが、この日はシジ被告やオリヴェイラ容疑者が大統領府にボルソナロ氏を訪ねている。(1)
計画では、12月15日にルーラ氏とアルキミン氏を銃殺もしくは毒殺し、モラエス判事を誘拐して毒殺することなどが記されていた。モラエス判事に対する尾行行為も、11月12日以降に行われ始めている。(2)
計画書では、暗殺実行日の翌日の12月16日に連邦政府が「政権危機部隊」なる組織を結成することや、アウグスト・エレーノ大統領府安全保障室(GSI)長官(当時)とブラガ・ネット氏をトップに据えることまで記されていた。
これらの疑惑に関し、ブラガ・ネット氏の弁護士は「連警の捜査資料が入手できないため、答えようがない」との声明を出している。
さらに、シジ被告とフェルナンデス容疑者が行った会話も見つかっている。それは12月8日に行われたもので、それによると、フェルナンデス容疑者はこの日、ボルソナロ氏に会っている。また、フェルナンデス容疑者はシジ被告に「新大統領の認証式が行われる12日までに計画を実行するのは不可能だとボルソナロ氏から言われた」と伝え、「だが、12月31日までは実行可能と言われた」と語っている。この会話により、「ボルソナロ氏が暗殺計画について知っていたのではないか」との憶測が流れている。(3)
シジ被告は19日に連警で事情聴取を受けたが、「暗殺計画については知らない」と主張した。だが、見つかった証拠との食い違いもあることから、連警は司法取引の無効化を要請。シジ被告は21日に最高裁でモラエス判事から直接、事情聴取を受けることになっている。(4)
ボルソナロ氏は19日はアラゴアス州で釣りを楽しんでいたが、今回の捜査に関して訊かれ、「ルーラ氏がG20の席で民主主義を守っている姿をアピールしたかったのだろう」と語っている。
また、前大統領長男のフラヴィオ上議は、「殺したいと思うだけでは罪にならない」というが、国家の秩序を転覆させる目的で暴動を起こす内乱罪相当の場合、計画だけでも罪を問われる可能性があるようだ。(5)