歳出削減案不評でレアル急落=基本金利0・75%上げ説も

【既報関連】ハダジ財相が27日に公表し、翌28日に詳細を発表した歳出削減策は、金融機関などからは不評で、27日の公表前からドル高レアル安が急速に進展。29日には商業ドルが1ドル=6・11レ、並行ドルが6・20レに至る事態も生じた。 29日の急激なドル高レアル安は、歳出削減策への不満の表れと失業率に関するデータが公表されたことの相乗効果といわれたが、29日付テラ・サイトなどは歳出削減策が投資家や金融市場アナリストから不評だった理由を以下のように説明している。
テラ・サイト(1)によると、投資家やアナリスト達に冷や水を浴びせた最も大きな原因は、ルーラ大統領が選挙公約の一つとしていた月収5千レまでの労働者への免税措置が抱きあわされたことだ。所得税の課税基準変更は議会の承認が必要な項目の一つで、発表イコール実行ではないが、為替の急激な動きは発表前に所得減税の情報が漏れたことが引き起こしたという説もあり、財政均衡法に沿った財政管理のために歳出を減らそうとする中で、税収減を招くような措置を抱き合わせたことで、この策では財政均衡法遵守には不十分との思いを招いたといえる。
29日付G1サイト(2)は、所得減税が不評の原因だったことを、ルーラ氏の選挙公約を抱き合わせた歳出削減策を発表したことで、政府はハダジ財相のビールと自分のビールに水を差したという表現で表している。
テラ・サイトは、月収5千レまでの人への免税措置は450~500億レの減収を意味するが、月収5万レ以上の人への新たな課税でこの穴を埋めるという方法が期待する形で機能するかは疑問で、穴埋めだけでは基礎的収支のバランスの正常化には不十分とも記している。
統一地方選前から待たれていた歳出削減策発表が27日になったのは、軍や各省庁との交渉に手間取ったことと最終決定権を持つ大統領が首を縦に振らなかったことが原因だ。そういう意味で、連邦議会との話し合いも重ねた上で発表した削減策が不評だったことは、交渉力や大統領を説き伏せられるかを試すテストでハダジ財相が大減点されたことを示す。
ただ、28、29日にはハダジ氏が市場の予測は誤っており、再検討が必要とした上で、25~26年に700億レという削減策は「特効薬」ではなく、必要ならば見直しも行うと発言(28日付アジェンシア・ブラジルなど(3)(4)参照)。また、29日付G1サイトなど(5)(6)によると、29日にはパシェコ上院議長も27日以降の市場の動きは行き過ぎとの見方を表明。同議長は28日も、削減策に関連する憲法改正補則案(PEC)の審議は議会が休暇に入る前に行うと約束している。
また、29日にはリラ下院議長も、歳出削減のための審議にはスピードと善意を持って臨むが、所得税改革は来年以降に扱うと明言した(29日付G1サイト(7)参照)。
29日付G1サイト(8)によると、下院が言う迅速な審議には議員割当金の開放が必要との声もあるようだが、上下両院議長が所得税改革は財政状態を確認しながら一歩ずつ進めると語ったことなどで市場は落ち着きを取り戻し、29日午後はドルが下がり、株式指数が上昇し始めた(29日付G1サイト(9)参照)。
なお、中銀次期総裁のガリポリ氏は、一時的なドル高とは別に、景気が良く、失業率も下がっている時は経済基本金利(Selic)を引き上げる必要があることも示唆。市場では、12月の通貨政策委員会(Copom)では0・75%ポイントの引き上げとなるとの見方も強まっている(29日付エスタード紙(10)参照)。