中国=鉱山採掘企業を買収=ウラン埋蔵地に懸念の声

中国国有企業「中国有色金属貿易公司(CNT)」(親会社は中国有色金属鉱業集団公司)が、北部アマゾナス州でスズ採掘を行う「ミネラソン・タボカ(Mineração Taboca、以下、タボカ)」を3億4千万米ドル(約510億円、約20億レアル)で買収した。この地域には原子力エネルギー生成用の燃料として使用されるウランも豊富に埋蔵されていることから、一部で懸念の声も上がっていたが、今回の買収は、中国がブラジルの鉱業資源へのさらなる投資を強化する一環として行ったものだと、28日付オ・グローボ紙など(1)(2)が報じた。
CNTによる買収契約締結は、タボカを所有していたペルーの企業「ミンスル(Minsur)」側も認めており、26日にアマゾナス州政府に通知された。
CNTはペルーやチリを含む南米市場への投資を通じて鉱業資源を確保しており、タボカの買収もその一環であると位置づけられている。
タボカは、同州のプレジデンテ・フィゲイレード市に位置するピチンガ鉱山でスズを採掘している企業だ。スズは、電子機器や合金、電池などの製造に広く利用されており、その商業的価値は高い。
同地域には、有望とされるウラン埋蔵地が存在するが、これはタボカの所有するものではない。ブラジル憲法ではウランは国家の独占対象とされており、国内外を問わず、民間企業が探査・採掘することはできない。
国家核エネルギー委員会(CNEN)の放射線防護・原子力安全局顧問であるリカルド・グテーレス氏は、この鉱山がスズ専用であることを明言し、ウランなどの核物質が検出されることはあるものの、微量で商業的価値はないと発言。「今回の取引は、ウラン埋蔵地の売却ではない。それは連邦政府の専権事項に属する」と補足した。
同氏はまた、ウラン採掘の可能性を評価する責任は鉱山動力省に所属する国営企業「ブラジル原子力産業(INB)」にあると指摘し、「ウランは自然界に多様な形態で存在し、その採掘や抽出は容易ではない。現時点では、INBはこの地域にあるウランを採掘するための調査やライセンス取得手続きを開始していない」と述べた。
INBも声明の中で、当該地域のウラン鉱山の売却は行われておらず、核鉱物やその濃縮物と派生物の調査、採掘、販売は同社が担うべきであると強調している。
一方、リオ連邦大学(UFRJ)の核エネルギープログラム教授であるアキリーノ・センラ氏は、ブラジル国内で唯一稼働中のウラン鉱山が北東部バイア州セルトン地方のカエチテ市にあるが、ピチンガのように将来性のある埋蔵地が他にもあると述べている。
「ピチンガには大規模なウランの地質学的埋蔵地がある。推定では、カエチテの約2倍に相当する15万トンのウラン精鉱が存在する。ただし、これらは規制機関の監視下にある」とアキリーノ教授は説明した。
同教授は、ウランやトリウムなどの核鉱物が他の資源採掘中に検出される可能性があることを説明しているが、法律では核鉱物の含有割合に基づく制限が定められていると述べている。これらの資源の採掘は、戦略的な理由から連邦政府の専権事項である。
「法律によれば、非核鉱山で核鉱物が発見された場合、国家鉱業監督庁(ANM)、CNEN、INBに通知し、地域の評価が行われる必要がある。利用可能であると判断された場合、探査や採掘は連邦政府との共同事業で行われなければならない」と同教授は述べている。