日系3世実業家=フラビオ・ヒデオ・ミカミ氏が講演=祖父母の体験糧に新ビジネス展開

ブラジル日本商工会議所の異業種交流委員会(渡辺優二委員長)は11月26日、「ブラジル実業界における日系3世―New Generationの活躍・活動を知る」と題した講演会を開催した。講師には、広告代理店やイベントプロデュースを手がけるGrupo 365のCEOフラビオ・ヒデオ・ミカミ氏(42歳、3世、ブラジリア出身)が招かれた。オンライン参加を含む約60人が出席し、移民当初の曾祖父母の経験から現在のブラジルビジネス界における日系人の役割まで、幅広い視点での話が展開された。
ミカミ氏が率いるGrupo 365は、、広告代理店、ビジュアルコミュニケーション、イベントプロデュースのほか、コワーキングスペースの運営を通じて、小規模事業者やスタートアップに新たなビジネスチャンスを提供している。
同社のコワーキングスペースは現在350社が利用し、ネットワーキングや知識共有を促進する場として機能している。
また、過去に4年ほど開催が停止されていたが、「日本の文化や歴史、価値観を伝える活動を失くしてはいけない」とミカミ氏が復活させた「ニッポ・フェスティバル」は、3日間で2万人が訪れるイベントに成長した。
ミカミ氏はブラジリア大学卒業後、インターネット関連事業を含むさまざまな挑戦を重ねた。彼のリーダーシップの原点は、17歳の時に務めたブラジリア日伯文化娯楽クラブの青年会会長時代にあるという。100人規模のメンバーとともにイベントを企画し、収益を団体運営に寄付する経験を積み、この背景が現在の社会貢献活動にも活かされている。
ミカミ氏は、REN Brasil(A Rede Nikkei do Brasil)の副代表としても活動し、日系人プロフェッショナルを集い、その交流を通じてコミュニティの活性化と支援を行うネットワークを組織する。特に「心を込めたおもてなし」や「品質重視」の日本文化の普及を目指し、交流会では真の人間関係構築を重視している。

ミカミ氏の曾祖父母は、移民当初、サンパウロ州やミナスジェライス州で夜逃げせざるを得ないような過酷な環境を経験。帰国するために資金を貯蓄していたが、第2次世界大戦の日本敗戦で貯めていた円は価値を失った。そうした逆境を乗り越え、戦後ゼロからの再出発を果たし、拠点をブラジリアに移した。
「家族の結束」で築き上げたスーパー経営や新たな事業は、ミカミ氏のビジネス哲学にも影響を与えている。祖先の困難を知ることで、同胞間の助け合いの重要性を再確認し、それが日系人社会の発展に繋がってきたという認識を語った。
ミカミ氏の活動は、次世代の日系コミュニティの発展や新たな日伯交流の展開に寄与するものとして大きな期待が寄せられている。