【27日の市況・速報】アルゼンチンの金融市場が熱狂/メルバルは前日比21.77%高/ペソが対ドルで4%近く上昇
アルゼンチンの金融市場が熱狂している。27日に行われた中間選挙で、ハビエル・ミレイ大統領率いる与党「ラ・リベルタ・アバンサ(LLA)」が勝利を収めたことを受け、投資家心理が急速に改善した。翌28日の市場では、通貨ペソが対ドルで4%近く上昇し、株式市場の代表指数メルバルは前日比21.77%高と、1990年代以来の急騰を記録した。市場関係者の間では「アルゼンチン資産が再び国際投資家の注目を集める」との期待が広がっている。

ペソ相場は一時10%上昇する場面もあり、終値は1ドル=1435ペソ(前週末比3.8%高)で取引を終えた。並行市場(ブルー市場)でも4.1%上昇の1465ペソを付け、久々に公式レートとの乖離が縮小した。現地金融サイトInfoBAEによると、外為市場の取引額は4億500万ドルと、直近2週間の平均取引量のほぼ倍に達した。これを受けて一部のエコノミストは「中央銀行が外貨準備を再構築する好機」と指摘する。
株式市場では、メルバル指数が22%近く急伸。米国上場のアルゼンチンETF「Global X MSCI Argentina」も18.84%高の88.24ドルに上昇した。エネルギー企業ビスタ・エナジーや発電大手パンパ・エネルヒア、銀行大手マクロ銀行などが軒並み高値を更新した。
「ミレイ路線」への信任
今回の中間選挙は、ミレイ政権の大胆な経済改革路線に対する国民の信任投票との性格を持つ。選挙結果は「緊縮策への不満が根強い中でも、国民がミレイの改革継続に一定の支持を示した」(ブエノスアイレス大の政治学者フェルナンド・コスタ氏)と受け止められている。実際、ミレイ政権は就任以来、公共支出の削減と規制緩和を柱とした「国家縮小政策」を進めており、その過程で失業率の上昇やインフレ率の高止まりが国民生活を圧迫していた。
それでも市場が反応したのは、改革の継続によるマクロ経済の安定化への期待が勝ったためだ。トランプ米大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「ミレイ大統領の圧倒的な勝利を祝福する。彼はすばらしい仕事をしている」と投稿し、米国との関係改善への期待も高まった。
国際投資家の評価
ブラジルの金融大手ブレードスコBBIは「新しい政治バランスと外部資金の支援が整ったことで、アルゼンチン資産は再評価局面に入った」と分析する。同社は、国債のリスクプレミアム(カントリーリスク)が現行の約1200ベーシスポイントから450〜750ポイント程度まで低下する可能性を指摘し、「株式市場は中期的に上昇余地を大きく残している」とする。
また、イタウBBAは銀行セクターの格付けを「アウトパフォーム(市場平均を上回る)」に引き上げた。報告書では「選挙後の政治安定により、金融機関の信用コストが低下し、貸出金利の利ざやが回復する」と予測している。マクロ銀行(Banco Macro)は、不良債権管理の厳格さと低コストの資金調達力を武器に「国内回復局面の最大の受益者」と評価された。
RPSキャピタルの創業者パオロ・ディ・ソラ氏は「国際的な投資家の間では、アルゼンチンが“最もホットな投資先”として話題になっている」と指摘。「国内ではブラジルが注目を集めているが、国外ではスペイン語圏の隣国こそが本命視されている」と語った。
景気回復への課題も
もっとも、景気の本格回復には課題も残る。現在、政策金利は依然として年率29%を超える水準にあり、インフレ率も前年同月比で30〜50%程度の水準と高止まりしている。財政赤字削減を急げば景気を冷やす一方、緩和に転じれば通貨安圧力が再燃しかねない。市場関係者の間では「ミレイ政権が構造改革を続けつつ、金融安定との両立をどう図るかが焦点」との声が多い。
ブエノスアイレスのエコノミスト、マリア・ガルシア氏は「ミレイ氏の強みは市場との対話能力にある」と指摘する。「彼は政治的ポピュリズムとは一線を画し、投資家心理を重視する。国際市場の信頼を維持できれば、資金流入と通貨安定が両立する可能性がある」。
「第2のメネム時代」到来か
一部アナリストの間では、今回の相場急騰を1990年代のメネム政権下での自由化改革になぞらえる見方も出ている。あの時代もペソ高と株高が進行し、外国資本が一斉に流入した。しかし、最終的には過剰な固定相場維持が危機を招いた。現政権がその轍を踏まないかが、今後の焦点となる。
一方で、市場の熱気はラテンアメリカ全体にも波及している。ブラジルやメキシコの投資家の間では「南米再評価」の機運が高まりつつあり、地域内資本の回帰が始まったとの見方もある。
 アルゼンチンは長年にわたる高インフレと財政不均衡から脱却できずにきたが、今回の選挙結果は「改革路線の持続可能性」に対する一定の信頼を示したものといえる。市場が示したこの熱狂が一過性に終わるのか、それとも実体経済の回復につながるのか──ミレイ政権の次の一手が、国際社会の注目を集めている。








