クーデター捜査=シジ証言公開で波紋=前大統領や家族も言及=判事の強圧的態度は脅迫?

最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は19日、ボルソナロ前大統領元側近の陸軍中尉マウロ・シジ容疑者が昨年の11月21日に行った司法取引の内容の公開を許可した。そこでは、18日に連邦検察庁が提出した連邦警察のクーデター捜査の起訴状の内容につながる証言が明らかにされており、注目されている。
シジ容疑者は司法取引の中で、「軍が連邦政府に介入すべきか」を論ずる会議に幾つか顔をのぞかせたことは認めたものの、クーデター行為に関して話し合った会合には一切参加していないとした。また、軍の中は過激な派閥とボルソナロ氏にブレーキをかけたいグループに分かれていたという。
シジ氏はこの時の証言で、ボルソナロ氏がアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事を偵察するように命じていたことも明らかにした。その目的は、モラエス判事が秘密裏にアミルトン・モウロン副大統領(当時)と会合を行っているのではないかと疑っていたからだという。
シジ氏はさらに、シジ氏とボルソナロ氏と長年の友人関係である同氏の父のマウロ・ロウレーナ氏が、サウジアラビアなどの中東諸国から贈呈されたプレゼントを転売し、2022~23年に8万6千ドルをボルソナロ氏に送っていたことを認めている。
ロレックス社やパテック・フィリップ社の時計やショパール社の宝石セットなどの高級品をボルソナロ氏が転売していた疑惑は以前から報じられているが、今回の起訴状はクーデター関連なので、転売に関しては含まれていない。
さらにシジ氏はボルソナロ氏の息子たちの大統領選後の態度にも触れた。それによると、長男フラヴィオ上議はクーデターには反対のグループに属し、ボルソナロ氏に敗戦を受け止めて欲しがっていたが、三男エドゥアルド下議はボルソナロ氏に権力を保持し続けることを求める過激派グループに属していたという。
過激派グループの意見は、「ルーラ氏側の不正を見つけることに固執する」タイプと、「武力クーデターも辞さない」とし、銃の自由化を求める「収集家、スポーツ射撃家、狩猟家」からなるCACのグループに二分されており、後者は武装蜂起を求めていたという。この過激派グループには前大統領夫人のミシェレ氏や前政権の重要閣僚だったオニキス・ロレンゾーニ氏も含まれていたという。
また、大統領選でボルソナロ氏の副候補だったヴァルテル・ブラガ・ネット氏から現金の入ったワイン詰め箱を大統領官邸で受け取り、それを、ルーラ氏・ジェラルド・アルキミン氏の正副大統領候補(当時)や、モラエス選挙高裁長官(当時)の暗殺計画を練っていたグループ「緑と黄色の短剣」の一員だったラファエル・マルチンズ・デ・オリヴェイラ容疑者に渡したと証言している。(1)
一連の証言はモラエス判事の眼の前で行われている。同判事はその際、シジ容疑者がそれ以前の証言で、連警が調べて浮上したことを語っていなかったとして責め、「真実を言う最後の機会だ」と詰め寄ったという。 (2)
20日付アンタゴニスタ・サイト(3)記事は、モラエス判事はこの時、情報を隠していた場合はシジ容疑者を再逮捕して捜査を継続し、捜査対象者には父親、その妻、長女の責任追及も含まれると脅したとし、グスタボ・ガイヤ下議(PL)は「私は現在、シジが刑務所で受けた精神的拷問、強制、脅迫、そしてモラエスが望んだ通りのことを言うための家族逮捕の脅迫について報告する苦情を米州人権委員会に送っている」とXに投稿したことを紹介した。
19日付G1サイト(4)によれば、上院野党リーダーのロジェリオ・マリーニョ(PL)は「ボルソナロ氏は、ボルソナリズムを打ち破ったと自慢する人々によって裁かれるということを常に覚えておくのは良いことだ」と発言。カロリーネ・デ・トニ下議(PL)も「この告訴はマウロ・シジの証言というたった一つの証拠に基づいている」と批判し、 「最高裁は政治裁判所です。それは政治的迫害だ」との意見を述べた。