日本発の環境型農業=注目の「ヤマカワプログラム」(5)=ヤマカワジャパン代表黒田さん

今回来伯した黒田栄さん(57歳、メキシコ生まれ)は、ヤマカワプログラムジャパンの代表を務める人物。黒田さんは同代表職の他、同時通訳や翻訳業に携わり、代替医療Gクリニック院長、保育園理事なども務め、栄養士の資格や保健体育の教員免許も持つなど多岐にわたる分野で活動している。
黒田さんは、両親が商社勤務で海外駐在を重ねていたことからメキシコで生まれ、ブラジルや、中東、インドネシアなど様々な国に住んだ経験を持つ。
その影響から、日本語を含めると11カ国語(日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、インドネシア語、アラビア語、ヘブライ語、フランス語、イタリア語、マレーシア語、テトウン語)を話すことができる。
通訳業は英語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語をメインに行っており、オリンピックなど国際試合のスポーツ通訳なども担当したという。
黒田さんは大学卒業後、サンパウロに赴任していた父を訪ね、3年間ブラジルに住んだ。「高校生の時、世界から栄養失調や飢餓を無くしたいと思って栄養士の資格を取りました。メキシコの貧民街で栄養士として働きたかったのですが、知り合いもいなかったので、当時父がサンパウロに赴任していたこともあり3年ほどブラジルに住みました。貧民街で人の為に働きたいことには変わりなかったので、ブラジルについた翌日から貧民街に入って手伝ったりしました。縁があってフォルターレーザの片田舎の貧民街でも1年間ボランティアをしました。そういった経験があり今ではポルトガル語やその他の通訳ができています」と語る。
多言語を扱える黒田さんは、農林水産省が実施した委託事業「中南米日系農業者等との連携強化・ビジネス創出委託事業―中南米日系農業者等」のスペイン語通訳も行っており、そこで山川さんと出会ったという。
通訳を行う中で、ヤマカワプログラムの目的や理念、方法などを正しく日本語と外国語で伝えることができると見込まれ、2023年4月に代表に任命されたという。
黒田さんは「山川先生に代表就任を頼まれた時は、本当に驚き、初めは遠慮しました。通訳として関わっていただけで、その組織の代表をするなんて考えてもいなかったので…。ただ、土地を酷使して土が疲弊している現在の世界状況には疑問があり、地球を蘇生して豊かな土地にしたいという先生の考えに共感しました」と述べる。
続けて「先生は南米の広大な土地が肥沃になれば、世界的飢饉問題が起きても20%までの飢餓を防げると言い切っていました。その言葉と高校生の時から抱いていた世界の栄養失調撲滅の夢が重なり、代表就任を頼まれてから半年後に引き受けました。現在もほぼ毎日、色々な国からヤマカワプログラムについて問い合わせをいただき、対応しています」と語った。
黒田さんに日系社会の印象を聞くと、「私がブラジルに来た当初、一世の方から開拓時の話を聞かせてもらいました。聞いていて心が痛くなるところもあり、本当に大変な時代だったんだなと痛感しました。そういった苦労の結晶が今のブラジル日系社会と日系農園なのだと思います」と述べた。(つづく、淀貴彦記者)