《記者コラム》ドリヴァル政権、そろそろ限界か?

「この機を逃すと、来年のW杯優勝は厳しいだろうな」。サッカー代表(セレソン)のドリヴァル・ジュニオル監督の去就についてのことだ。1対4という記録的惨敗を喫した25日の対アルゼンチン戦を見て、改めてそう思った。
言い訳をしようと思えばできないことはない。前の試合、コロンビア戦で守護神アリソンが負傷し、ボランチのレギュラーのブルーノ・ギマリャンエスとジェルソンの不在。さらにはネイマールの招集取り消しがあった。
ただ、それを言うならアルゼンチンもメッシとラウタロ・マルティネスという2人の大きな得点源抜きの、若手中心のメンバーだった。それでも十分に生き生きしていた。この差は一体何なのか。
現在のセレソンの特に悪い点は、完封できないこと。相手が誰であれ、必ず失点している。アルゼンチン戦でも相手のパスが簡単にペナルティ・エリアまで届いてしまい、易々と失点。アルゼンチン戦でも、最初に放たれた2本のシュートがそのまま失点につながっている。こうしたことは、チッチ氏が監督だった頃には起きなかった。
シュートがなかなか打てないもどかしいまでの消極性も問題だ。ヴィニシウス・ジュニオル、ラフィーニャという、レアル・マドリッドとバルセロナを代表する2人のバロンドール候補を擁しながらのこの現状、明らかにリズムが悪い。
ブラジル・サッカー協会(CBF)のエジナルド・ロドリゲス会長はこれまでドリヴァル氏を強く擁護してきた。「短期間に監督の首をすげ替えるのではチームは育たない」。ある意味、筋の通った主張ではある。
ドリヴァル監督が就任してすでに1年が経つ。昨年の今頃は、ヨーロッパ遠征での対イングランド、対スペイン戦で17歳だったエンドリックが2試合連続ゴールを決め、W杯優勝に向け期待が高まっていた。さらに昨年末には17歳の新星エステヴォンが全国選手権で最優秀選手を取るなど楽しみな話題もあった。
しかし、これらの期待要素はセレソンの結果に反映されていない。22年W杯でアルゼンチンが見せた「若手選手を育てながら強くなる」というやり方ができていない。果たしてセレソンにこの1年で何の成長があったのか。
現状のままでも南米予選はギリギリで通過できるだろう。だが、監督を代えなければ優勝どころか上位に入ることは難しく、本気で優勝を狙うなら、今のタイミングで監督を変え、そこからW杯本番に向け調子を上げていく他にはないように思える。現状の澱んだ空気が漂うままでは、南米予選も最後まで大慌ての展開となり得る。早めに手を打つべきではないだろうか。(陽)